不振の要因“金星配給の多さ”
ともに不振の最大の要因は、序盤で平幕力士に星を落とす金星配給の多さだろう。豊昇龍は名古屋場所でも藤ノ川(21)、伯乃富士(22)に敗れた2個と合わせて17個目を記録した。大の里も同じ藤ノ川と豪ノ山(28)に星を落とした。こちらは昇進7場所目で13個になる。
敗れた勝負を見ると、豊昇龍は横綱としての強さを強調したいあまりに張り差しや強引な投げを試みたり、相手を吹っ飛ばすような出足で逆転を食らうことが目立つ。しっかり頭で当たり、攻め込んでから相手を捕まえていけば、取りこぼしは減ると思う。
大の里は完璧主義者なのだと感じる。当たって右差し、2歩目、3歩目で優位に立てない時に、そこから慌てて引いてしまう悪癖が治らない。体勢が悪くなって引くというよりも、まだ五分五分の状態から自ら墓穴を掘るパターンが定着している。常に完勝出来るわけではない。一気に優位に立てなくても、落ち着いて我慢する取り口を身につけないと、これから先、長く最高位を保っていくのが難しくなるのではないか。
今年はここまで初場所から4場所は大関の安青錦、関脇の霧島(30)、小結の若隆景(31)、関脇の安青錦といずれも大関以下の3力士が12勝3敗で優勝した。実は58(昭和33)年に名古屋場所が始まり、年6場所制になって以降、年間を通じて横綱が一度も優勝できなかったことが一度だけある。92(平成4)年だ。この年は北勝海、旭富士の2横綱の晩年で旭富士が初場所で引退。北勝海は初場所全休、春場所3敗12休で夏場所前に引退した。このため、約60年ぶりに横綱不在になった年で、貴花田(後の横綱貴乃花)と曙が初優勝から2度ずつ優勝を飾り、曙は翌年初場所後に史上初の外国出身横綱に昇進した。「曙貴時代」の幕開けになった年である。
しかし、横綱不在があったこの年を除けば、綱を締めた力士が最低1場所は賜杯を手にしている。9月の秋場所、11月の九州場所で両横綱のどちらかが優勝を果たせなければ、最高位の力士が在籍しながら初場所から九州場所まで年6場所の優勝を全て大関以下に譲るという初の屈辱を味わうことになる。
2人の昇進後、横綱の優勝は昨年秋場所に13勝2敗で並んだ両横綱の決定戦で大の里が勝った1度切り。来場所は安青錦が大関に返り咲き、霧島も横綱への挑戦権が継続されている。3度目の決定戦で敗れた熱海富士も初優勝を狙う。幕内の上位陣も横綱戦を嫌がるよりも、楽しみにしている様に映る。楽に勝てる相手は余りいない。「品格、力量抜群」と推挙された横綱に求められるのは、やはり強さと安定だろう。左足のけがを抱えながら名古屋場所を制した安青錦をみれば、体調面を理由にした言い訳は聞きたくはないのが本音だ。2横綱が綱の権威を示すのに、皆が待ってくれる時間は、もう残り少ない。
(スポーツライター・竹園隆浩)
※写真は、名古屋場所14日目豊昇龍休場により霧島の不戦勝を告げる垂れ幕














