番付社会と言われる角界で、その頂点に君臨する横綱の権威が揺らいでいる。7月にIGアリーナで行われた大相撲名古屋場所では、東の豊昇龍(27)が6敗目を喫した翌日の14日目に優勝争いをしている大関霧島戦を前に休場。西の大の里(26)は3場所ぶりに皆勤したものの、9勝止まり。不振続きの2横綱に、ご意見番である横綱審議委員会(横審)が場所後の定例会で八角理事長(63、元横綱北勝海)に対して、異例の「強いお願い」を申し入れる事態に発展している。

千秋楽の翌日、定例会後の会見で横審の大島理森委員長(79)が両横綱への思いの丈をぶつけるように話し出した。「名古屋場所は非常に盛り上がりましたが、両横綱に対する委員の皆様方のご意見を総じて申し上げると、一層、横綱としての責任、自覚。心技体の言葉を基にして、一層自分自身に問いかけ、体を万全にし、相撲道における姿を是非、見せていただく責任がある。私どもの共通の認識として理事長の方から是非、両横綱に伝えて欲しい、と申し上げた」

1950(昭和25)年に、3横綱の休場を機に発足した横審は、日本相撲協会から諮問される横綱昇進の議案を審議するほか、不振や休場続き、素行に問題がある横綱に対して、委員の3分の2以上の決議で「激励」「注意」「引退勧告」などが出来ると定められている。過去には朝青龍に「引退勧告」。白鵬、鶴竜に「注意」、稀勢の里に「激励」を出したこ
とがある。

しかし、今回はその決議まで踏み込むことはなかったという。委員長は「決議の議論はありませんでした。強い、強い思いを理事長に伝えさせていただいて、そのことを両横綱に必ず伝えていただく。決議を見送ったという表現は、いささか妥当ではなく、そこまでの議論の深まりはまだまだで、事実とはちょっと違う。その前段階かもしれない。委員の皆さんが『頑張って欲しい』『責任を果たして欲しい』という思いを強く理事長に申し上げた」と話した。