無料動画の利用者の半分が「耳だけで聴くことがある」
まず、前提になる数字から紹介させてください。博報堂メディア環境研究所が2026年3月に公開した調査によると、無料の動画サービスをふだん利用している人のうち、およそ半数が「動画を耳だけで聴くことがある」と答えています。10代にかぎってみると、その割合は7割ほどまで上がります。
場面としては、家事をしながら、勉強をしながら、通学や散歩をしながら。理由でいちばん多かったのが、「映像を見なくても楽しめるコンテンツだから」でした。
ひと昔前まで、動画は画面の前に座って観るものでした。ところがいまの若い世代にとって、YouTubeはラジオやポッドキャストと地続きの「ながら聴き」ができるメディアになりつつある。動画と音声を分けていた線が、受け手の側から溶けはじめているということです。
VTuberのファンが好きなのは、見た目より「声」だった
この変化が極端なかたちで表れているのが、VTuberの世界です。キャラクターの姿でYouTubeなどの動画・ライブ配信サービスで活動する配信者のことで、名前に「Virtual YouTuber」と入っているくらいですから、本来は目で見るメディアのはずです。
ところが、トイズキング(有限会社ヤマト)が2025年7月に、VTuberを週1回以上視聴していて「推し」がいる10代から30代の男女1,013人を対象に実施した調査では、意外な結果が出ています。複数回答で聞いた「VTuberにハマったきっかけ」の1位は「トークの面白さ」で54.9%。同じく複数回答の「VTuberの好きなところ」では、「声」が51.0%で、「キャラクターのビジュアル」の48.7%をわずかに上回りました。
熱心なファンにかぎった調査ではありますが、作り込まれたキャラクターと並べても、声を選ぶ人のほうがわずかに多い。矢野経済研究所が2025年4月に発表した調査では、国内のVTuber市場は2023年度の800億円から、2024年度は1,050億円の見込み、2025年度は1,260億円と予測されています。国内でVTuberの事務所やプロジェクトを運営する企業の、海外事業も含めた当該事業の売上高を積み上げた数字です。産業としてはグッズの売上が大きな柱になっていますが、ファンがその世界に入る入口になっているのは、派手な映像よりも毎日のしゃべりのほうだ、ということです。














