毎日会う鉄道より、年に数回の航空が選ばれる
ここで、鉄道会社と比べてみると、興味深いことがわかります。
お客さんと顔を合わせる回数でいえば、鉄道は航空の比ではありません。JR東日本の1年間の輸送人員は延べ60.3億人。一方、JALの国内・国際の旅客は年間4,600万人ほどです。毎日乗る電車と、年に数回の飛行機。回数では鉄道が桁違いに勝っています。
ところが、カードの数字は逆転します。
会員1人が1年間にカードで使う金額を、公開されている取扱高と会員数から単純に計算してみると、JR東日本のビューカードが約46万円なのに対して、JALカードは約122万円。2.7倍の差があります。毎日会っている鉄道より、年に数回しか会わない航空のほうが、財布の中では選ばれているわけです。
なぜでしょうか。鍵は、「日常」と「非日常」の違いだと思います。
ビューカードは「Suicaのチャージに便利なカード」、つまり日常の道具として使われがちです。一方のJALカードは、「次の旅行のために、ふだんの買い物もぜんぶこれで払う」というメインカードとして使われる。旅行という非日常への切符だからこそ、日常の買い物をまるごと吸い寄せられる。日常の便利さより、非日常への憧れのほうが、人の決済行動を大きく動かすのです。
これを裏づける研究もあります。アメリカのマーケティングの学術誌に載った分析によると、上級会員のステータスまであと少し、という人ほど、値段や時間の条件が多少悪くても、同じ航空会社を選び続ける傾向があるそうです。マイルや会員ランクは、損得の計算を超えて人の行動を変えてしまうのです。
ANAのSFC改定案、利用者の意見を受けて再検討へ
上級会員の特典の目玉のひとつが、空港のラウンジを使えることです。この特典をめぐって、今年ひとつの動きがありました。
ANAは2026年、スーパーフライヤーズカード(SFC)の特典を2028年4月から見直す当初案を公表しました。案では、ANAカードとANA Payの年間決済額が300万円未満の会員を「SFC LITE」とし、ANAラウンジの利用対象外とする内容が示されていました。
しかし、多くの利用者から意見が寄せられたことを受けて、ANAは現在、改定内容を再検討しています。詳細は2026年9月末までに改めて案内するとしています。
ステータスの獲得を目的に飛行機に乗り続ける、いわゆる「SFC修行」という言葉があるくらい、この特典には熱心な利用者がいます。裏を返せば、ラウンジに入る権利という、モノですらない「体験」に、それだけ多くの人が本気になっている、ということでもあります。














