「どこかにマイル」が安くできる理由

わかりやすい例をひとつ紹介します。

JALに「どこかにマイル」というサービスがあります。出発地や日程を指定して申し込むと、JALから4つの行き先候補が示され、申し込みから3日以内に、そのうちのどこへ飛ぶかが決まる企画です。必要なマイルは往復7,000マイル。通常の国内線の特典航空券が往復9,000マイルからであることを考えると、かなり抑えられています。

なぜここまで抑えられるのか。JALが理由を公表しているわけではないので、ここからは僕の見方です。

考えられるのは、行き先の候補や対象の便をJAL側が調整できることです。利用者が飛ぶ先をひとつに決めないぶん、航空会社は需要の偏りをならしやすくなります。

飛行機の座席は、出発してしまえばもう売ることができない、期限つきの商品です。航空会社にとっては空席を活かしやすく、利用者にとっては旅行という体験が残る。この両方の利点が、「どこかにマイル」という仕組みを支えているのだと思います。

ポイントを現金のように配るのとは違って、余っている座席を使いながら、受け取る側には旅の記憶が残る。マイルという仕組みの強さは、ここにあるのだと思います。

「1ポイント」をもらった記憶はすぐに消えますが、「マイルで行った沖縄旅行」は何年も覚えている。人間の記憶に残るのは、金額ではなく体験のほうなのだと思います。

マイルの7割は、飛行機以外で貯まっている

マイルという仕組みの大きさは、JALの数字にも表れています。

JALのマイレージ会員は約4,000万人。そして、いまJALが発行しているマイルのうち、およそ70%は飛行機以外で貯まったものです。買い物、クレジットカードの利用、提携サービス。マイルはとっくに「飛行機のおまけ」ではなくなっていて、日常の消費を吸い寄せる本業級の事業になっています。

実際、JALの「マイル・金融・コマース事業」は、直近の決算で売上が2,222億円、利益では455億円を稼いでいます。

ただし、これはマイル単体の数字ではありません。マイル関連のサービスに加えて、クレジットカードや卸売・小売なども含んだ部門全体の数字です。それでも、人を運ぶ以外のところで2,000億円を超える売上が立っていることに変わりはありません。飛行機を飛ばす会社の中に、もうひとつの事業が育っているわけです。

これは日本だけの話ではありません。アメリカのデルタ航空は2025年、アメリカン・エキスプレスとのSkyMiles提携から82億ドルの報酬を得ています。この提携には、マイルの販売に加えて、共同マーケティングやラウンジの利用など、複数のサービスが含まれます。カード会社は会員に配るマイルを航空会社から仕入れてもいるので、カードが使われるほど航空会社にお金が入る関係になっています。