「軍民融合」への警戒と活況のAI産業
しかし、AIの軍事利用やテロへの悪用といった懸念は絶えず存在します。中国国内の主要都市では、AIによる無人の自動運転タクシーや無人運搬装置が実用化され、「人類のための」AI活用が進む一方で、顔認証や個人の居場所特定など、国内の治安維持にもAIが大きな役割を果たしています。さらに、無人ドローンや人型・犬型ロボットなど、紛争地で兵士の代わりとなる技術にもAIが活用されています。
中国は民間の力と合わせ、AIを中心とした先端技術の「軍民融合」を国家戦略に据えています。技術進歩が著しい中国のAI産業への危機感から、アメリカやEUは国家の安全保障を理由に中国製テック製品の輸入を制限しています。こうした中で、中国が自国主導で新たなAIのアライアンスを構築しようとする動きに主要国が警戒を強めるのは当然かもしれません。
一方で、政府のテコ入れを受けた中国のAI関連業界は活況を呈しています。今年の世界AI大会に関連したイベントには各国の企業約1100社が3000点を超える製品やサービスを出品しましたが、その大半は中国企業だったといいます。共同通信の報道によると、中国の政府系シンクタンクは、中国のAI産業規模が2024年の約21兆5000億円から2025年には約28兆円へと3割も成長したとまとめており、今年はさらに伸びるのが確実です。
そして、この業界をリードする若手・中堅の新興起業家やイノベーターの多くは、アメリカへの留学帰国者です。アメリカの大学や研究機関で学び、アメリカのAI大手でさらに研究を積んだ後に中国に戻って起業するケースが目立ちます。かつてのトランプ政権が外国人への留学ビザを厳格化したのも、こうした技術流出が大きな要因のようです。
AIをキーワードにした米中両国のせめぎ合いから、今後も目が離せません。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。














