トランプ政権の影と、相対的に高まる中国の存在感
現在、南シナ海の島々については中国とフィリピンのほか、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾の6つの国・地域が領有権を主張しています。しかし、仲裁裁判所の判決から10年の節目に出された共同声明に参加したのは、このうちフィリピンだけでした。アジア・大洋州地区全体を見ても、日本、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドのみです。つまり、東南アジアの国々の多くは中国と摩擦を起こしたくないため「沈黙」しているのです。
先週、アメリカの世論調査会社が世界36の国・地域を対象に行った調査結果が発表されました。それによると、なんと27の国・地域で中国への好感度がアメリカを上回ったそうです。前回2025年の調査まではアメリカの方が好感度は高かったのですが、今回初めて逆転しました。
「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ政権が南シナ海への関心を薄れさせているとの指摘も多くあります。そうなると、中国が相対的に存在感を高め、中国を刺激したくないと考える国々が増えていくのも自然な流れかもしれません。中国が国際裁判所の判決を堂々と「紙くず」と言い切れる背景には、こうしたパワーバランスの変化があるのかもしれません。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。














