“北部の王”新首相誕生も試される船出 世論の支持は?

藤森祥平キャスター:
また新しい首相が誕生しました、イギリスのバーナム氏です。イギリス北部のマンチェスターで9年間市長を務めていました。「キング・オブ・ザ・ノース」(=北部の王)と呼ばれているんですね。飾らない庶民派だそうで、地方重視の政治を訴えている人です。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
格好も、Tシャツとかデニムを穿いていたりとかして、北部の訛りなので、ウェストミンスターのロンドンにいるようなエリートの政治家とは喋り方も違うように感じるらしくて、そういうところに人々が親しみを感じるんだと思うんですよね。

バーナム氏が市長を9年務めたマンチェスターは、エンゲルスが工場をやっていた街で、『イギリスにおける労働者階級の状態』という著作があるように、労働者の街です。バーナム氏はバスを公営化したり、コロナのロックダウンの時には「地方でそんなにやる必要ない、むしろ自営業の人やレストランの人を助けよう」ということで、ロックダウンに反対したりとか、そういうので庶民の人気があるみたいですけれど、中々難しいんじゃないかなという気はしてしまいます。

藤森キャスター:
その難しさの背景かもしれません。イギリスは労働党と保守党の二大政党制ですが、今人気を集めているのが、右派政党の「リフォームUK」で、5月の統一地方選でも躍進しています。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
その影響で、移民の問題などについては、バーナム氏は譲歩して、移民に対して厳しい姿勢を取ることになると思います。

ただ、バーナム氏がそもそもなぜ出てきたかというと、統一地方選で「緑の党」という、環境や移民の問題に対してより左派的な、プログレッシブな政党も人気を伸ばした。その時にバーナム氏は、ちょっと左だけどリフォームUKもあるしと真ん中に寄っていったら、結局中途半端になってしまった。

そういうのは国民に求められていないから、「そんな中途半端だったら、俺らはリフォームUKでいいじゃん」となってしまうと思うので、結局最初から難しい舵取りを強いられて、「中道がやっぱり上手くいくんだ」という考え方だと、労働党はいつまで経っても、右と左のポピュリズムの間で沈んでいってしまうというのが私の見立てです。

小川彩佳キャスター:
ただイギリスは、この10年で首相が7人変わっていて、この先どうなるか、上手くいかないとなると。ずっと漂流し続ける政治の行き着く先には何があるのでしょうか。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
本当はここでバーナム氏が「俺らはリフォームUKとは全然違う」と、左に寄っていって、例えば積極財政をやって、マンチェスターでバスを再公営化したように、医療や学校など色々なものを再公営化して「手厚くやっていくよ、そのために積極財政していくよ」みたいな姿勢を出せば、少し違う色を出せたと思います。

噂されているような新しい閣僚人事の情報を見る限りでは、そういう大胆な姿勢ではいかないようなので、また短命で終わる可能性が高いのではないか、というのが現状での私の見立てです。

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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 ドイツで博士号取得
専門は経済・社会思想近著『人新世の「黙示録」』