ウクライナの大統領府長官顧問がマリウポリについて「現地で条件なしの直接交渉を行う用意がある」とSNSに書き込みました。民間人や子ども、負傷者、部隊などを救うため、としています。現在マリウポリには10万人以上の市民などが残されていて、最後の砦となっている製鉄所にも1000人以上がいるとされています。こうした市民が今後避難することができるのか気になるところですが、「人道回廊」については、ウクライナ、ロシア、双方の主張が食い違う点も出てきています。今後のウクライナ東部などについて、専門家にききました。

■「条件なしの交渉を行う用意」

齋藤慎太郎キャスター:
プーチン大統領が事実上制圧したという考えを示したマリウポリ。マリウポリに取り残された市民をどう避難させるのか見ていきます。

まずウクライナ側です。
4月20日SNSでウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は「(マリウポリについて)現地で条件なしの直接交渉を行う用意がある。協議は1対1か2対2になる。民間人・アゾフ連隊・部隊・市民・子ども・負傷者を救うためだ」と現地で条件なしの直接交渉をロシア側に提案しました。

マリウポリに取り残されている市民は現在、10万人以上いると言われています。マリウポリ市議会によると、その中のアゾフスタリ製鉄所には1000人以上いるとみられています

■マリウポリ 人道回廊をめぐり”食い違い“

齋藤キャスター:
ロシアの国防省は20日(現地時間)、ウクライナ軍などに武器を置いて投降するよう改めて呼びかけました。

一方、ウクライナ側は20日(現地時間)、アゾフスタリ製鉄所を守る軍司令官は「これは我々にとって最後の数日、最後の数時間になるでしょう」と厳しい現実を伝えています。

その中で、ウクライナの副首相は20日午前9時(現地時間)テレグラムで「私たちは、女性、子ども、高齢者のために人道回廊について合意しました」と、ロシア側と人道回廊(市民の避難ルート)設置で合意したと明かしました。

ではこの人道回廊、ウクライナ側の計画はどのようなものなのでしょうか?

現在多くの人が取り残されているマリウポリからマリウポリの北西に位置するザポリージャという都市へ市民を避難させるというものです。ロイター通信によりますと、バスは90台で、民間人6000人を避難させる計画です。

ウクライナの副首相は20日午後0時(現地時間)テレグラムで「具体的な集合場所3か所を知らせる」と、SNSでバスがどこから出るかを知らせたということです。

結果どうなったのかというところですが”食い違い“が生まれました。

ウクライナの副首相は20日午後8時(現地時間)テレグラムで「残念ながら、”マリウポリの人道回廊“は計画通りに機能しませんでした。ロシア軍が停戦を確保できず、バスと救急車の待機地点まで人々を輸送できませんでした」としました。

一方で、ロシア側。ロシア国防省は人道回廊を設置し、ウクライナ側に自主的な投降を呼びかけたものの「誰もこの回廊を利用していないと指摘せざるを得ない」「投降に応じたものはいなかった」と主張しているということです。

しかし、ウクライナの副首相は21日午前8時(現地時間)テレグラムで「きのう4台の避難バスが人道回廊を通って街を出ました。私たちはザポリージャで彼らを待っています」と明かしており、4台の避難バスに関しては街を出ることができたということです。

■「結局はなんとも思ってない」

ホラン千秋キャスター:
広瀬さん、合意がなされた部分と、停戦において合意できなかったりと、なぜウクライナ側とロシア側で同じことについて違う情報が出てくるのでしょうか?

慶應義塾大学 総合政策学部 廣瀬陽子教授:
今回の戦争全てが情報戦という状況があり、情報があり乱れている。そして情報で相手を攻撃している状況があるのが、一番深刻な問題だと思います。やはりとにかく「相手が悪いので人民が救えない」とお互いに言っており、特にロシアが停戦を守っていないところが一番大きいですが、それが実際に人民の避難にも大きな影響を与えていて非常に由々しき状況だと思います。

井上貴博キャスター:
プーチン大統領としては、この場所一体を包囲して兵糧攻めのような形をとっている。プーチン大統領の頭の中は、民間人には手を出したくないという思いは、本音として本当にあるのか、はたまたこの人道回廊設置はただの国際社会のポーズでしかないのか。どうご覧になりますか。

廣瀬教授:
おそらくですが、残念ながら「人民を救うという気持ちはない」と思います。しかし、やはり国際的な批判をなるべく受けないために、人道回廊ということには一応応じる姿勢は見せつつ、実態としてはそれを用意しないところで、結局は「なんとも思ってない」というところに行き着くと思います。

井上キャスター:
兄弟とまで言っていたウクライナ人をなんとも思っていないということですか?

廣瀬教授:
特に今回においてはロシアが「ウクライナ人がナチスである」と最初から言っており、一般のウクライナ人についても「ナチスが設定した人間の盾」というような立て付けをしています。ですので「ナチスの人間の盾であれば、もう人民として扱わない」という態度なのではないかと思います。

■状況打開のカード「残念ながら今はない」

井上キャスター:
停戦交渉が全く進んでいないという状況はどうなってますか?

廣瀬教授:
やはりロシアとウクライナ側の争点が全く一致していないところで、やむを得ない状況かと思います。ウクライナ側が無条件の交渉を今提案していますが、それにロシアが乗ってくるとは到底思えないのが実情です。

井上キャスター:
そうなると、停戦交渉において全く前に進めていないという認識ですか?

廣瀬教授:
全く交渉については進んでいないですし、その中でどんどん人民が殺されていくという非常に残念な状況が続いています。ウクライナはここを何とか打開しなければ、非常に残虐な結果がどんどん出てきてしまうと思われます。

井上キャスター:
打開のカードはありますか?

廣瀬教授:
残念ながら今はないと思います。ただロシアは今回、ロシアがマリウポリを取ったと言ってしまっているので、そこで既成事実を何とか積み上げていってしまうのであろうと思います。