(ブルームバーグ):台湾の域内総生産(GDP)は8840億ドル(約143兆円)と、世界21位の経済規模にとどまる。
しかし、東シナ海と南シナ海に挟まれ、中国福建省の省都、福州から約250キロメートルに位置する人口約2300万人のこの島は、世界有数の経済パフォーマンスを示している。
16世紀、ポルトガル人航海士は台湾を「美しい島」を意味する「フォルモサ(Formosa)」と呼んだとされている。
台湾のGDPは2025年に8.8%増加した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値では、2026年はさらに加速して9.5%成長と、世界経済全体の3倍を超える伸びが見込まれる。
2023年はGDP成長率がわずか1.1%と世界的に出遅れていた台湾だったが、今や状況は一変した。投資家もこうした変化に注目しており、台湾株式の市場規模は世界5位に浮上し、米国と中国、日本、香港を追っている。
台湾経済の躍進は、AIブームの中心地である米国向け半導体や電子部品の輸出急増に支えられている。そして1992年以来初めて、対米輸出(財・サービス)で中国を追い抜いた。
ブルームバーグ集計データによると、台湾の米国向け輸出は今年1-5月に1161億ドルに膨らんだ。これに対し、中国の対米輸出は1042億ドルだった。この結果、台湾は米国向け輸出でメキシコとカナダに次ぐ3位となった。
台湾の対米輸出は、2024年10月に前例のない急増が始まるまでの20年間と比べると、12倍に膨らんでおり、米国への主要輸出国・地域上位10カ国の中でも突出した伸びを示している。
ブルームバーグ集計データによれば、台湾は輸出が過去最高水準に達していることに加え、台湾ドルもシンガポール・ドルと並んで世界で最も安定した通貨の一つとなっている。
また、2008年以降で最も低く変動の少ないインフレ率を維持し、賃金上昇によって実質所得は過去最高水準に達している。不動産市場も活況で、公債利回りはスイスと並び世界最低水準で推移している。
台湾だけ
しかし、台湾を巡る一般的な報道では、こうした経済面での特徴がほとんど取り上げられない。台湾と外交関係を持つ国は10カ国余りに減った。中国の意向を受け入れ、台湾との正式な外交関係を認めない国の数はその約15倍だ。
あらゆる問題をディール(取引)として扱うトランプ米大統領も最近、台湾を米国が防衛する必要性に疑問を呈した。だが、21世紀で最も重要な製品とも言える数十億個の微細電子部品を搭載した爪ほどの大きさの半導体を供給しているのが台湾で、台湾製のシリコンチップを世界は切望している。
ダイオードとトランジスタ、整流器、集積回路(IC)向け10ナノメートル(nm)および14nmの量産半導体の大半を供給できるのは、台湾だけだ。これらはスマートフォンや仮想現実(VR)ヘッドセット、自動運転、クラウドコンピューティング、電気自動車(EV)、AI、さらには米国の国家安全保障を支える中核部品となっている。
中国は台湾にとって主要な輸出・投資先である一方、中国の製造業や軍需産業は半導体分野における台湾企業のマネジメントに恒常的に依存している。その背景には、数十年にわたる中台の経済統合がある。
台湾の輸出の53%余りは、電気機械・設備、電子機器、コンピューター関連製品が占める。オランダの金融機関INGの大中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏によると、台湾による米国への半導体輸出は4月に前年同月比41%増となり、3月の46%増に続く高い伸びを記録した。
台湾証券取引所の加権指数を構成する1000社余りのうち、半導体・テクノロジーハードウエア企業は市場全体の時価総額の78%を占める。ブルームバーグ集計によれば、昨年はこのウエートが64%、5年前は57%、2015年は45%だった。
米国でも同様の傾向が強まっている。S&P500種株価指数の52業種のうち、19社で構成される半導体セクターは時価総額全体の16%を占め、最大の業種となっている。
これら企業の売上高はここ5年で平均7倍に拡大し、米国で最もハイペースで成長するセクターとなった。2位のインターネット・メディア・サービス業種の約2倍の伸びだ。
サプライチェーン
ブルームバーグ集計データによると、半導体業種の売上高は2026年に平均78%、2027年には46%増加し、引き続き米国で最も高い成長率を記録する見込みとなっている。
ブルームバーグのサプライチェーン分析では、米国の主要半導体メーカーは台湾企業への依存を一段と強めていることが示されている。時価総額5兆ドルのエヌビディアは、生産コスト全体の63%を台湾企業に支払っている。
時価総額2兆ドルのブロードコムと8900億ドルのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、2050億ドルのクアルコムも、生産コストの約3分の1を台湾企業に支払う。
時価総額世界6位の台湾積体電路製造(TSMC)は、対米取引の最大の恩恵を受けている。同社が2025年に米国で稼いだ売上高は過去最高の910億ドルと、売上高全体の74%を占めた。過去10年間の64%から大きく上昇している。
新規株式公開(IPO)を昨年実施した台湾ICメーカーの鴻勁精密は、時価総額が370億ドルと年初から5倍に拡大した。ブルームバーグに予想を提供した17人のアナリストによれば、同社の売上高は2026年に75%増加し、その後2年間も66%、65%と高い伸びが見込まれており、フィラデルフィア半導体株指数の67%、42%、22%を上回る見通しだ。
時価総額250億ドルの華邦電子(ウィンボンド・エレクトロニクス)はここ1年で株価が9倍となった。アナリストは2026年の売上高予想を178%引き上げており、その上方修正率は世界の半導体業界ベンチマークの5.6倍だ。
16世紀のポルトガル人航海士たちは、台湾が今日のような経済的な大成功を収めるとは全く想像できなかっただろう。もしそれを知っていたなら、「美しい島」を意味する「フォルモサ」ではなく、「繁栄」を意味する「プロスペリダーデ(Prosperidade)」と呼んでいたかもしれない。
(マシュー・A・ウィンクラー氏はブルームバーグ・ニュースの名誉編集主幹で、市場動向について執筆しています。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Taiwan Catches China in Economic ‘Prosperidade’: Matthew Winkler(抜粋)
--取材協力:Shin Pei.
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