日本はウクライナから何を学び、何を備えるべきか

――ドローンという新たな兵器が登場してきた状況で、日本はどう対応すればいいのでしょうか。

小泉 自衛隊はこれから小さくなっていくと思います。自衛隊全体の定員は約24万7000人で、現員は約22万人です。人口減少が今のままで推移すれば、2040年には自衛官が13万人くらいになるとの見方もあります。人数が増えないどころか、減っていくことは確実です。仮に中国の人民解放軍が同じペースで縮小したとしても、おそらく100万人規模の軍隊を維持できるでしょう。

こういう状態で中国に変な気を起こさせない抑止力を維持することを考えると、私は自衛隊のロボット化は必要だと思っています。ただ、ロボットをたくさん導入して、いろいろなものをネットワークにつなげることは必要条件ではあるけれども、十分条件ではありません。ウクライナの状況を見て重要だと思うのは、エコシステム(注)を作れるかどうかです。新しい技術を使いこなすための土壌を作ることが、今一番必要ではないでしょうか。

(注)エコシステム…本来「生態系」を意味する言葉だが、ビジネスで用いられる場合は、多様な企業による連携や協力を通じ共存共栄する枠組みを指す

――ウクライナに学ぶこともたくさんあるということでしょうか。

小泉 ウクライナに学ぶべき事例があることは、多くの方々が指摘されています。いろいろな戦闘を共有するためのパイプを作ることも1つです。

日本政府は2025年度補正予算で、今年6月に北大西洋条約機構(NATO)の「ウクライナの優先必要品リスト(PURL)に約22億円を拠出しました。PURLのリストからはウクライナが今必要としているものや数量がわかるので、PURLの枠組みを通じて現代戦を学ぶことができると思います。

それと、NATOはウクライナと演習をしているので、自衛隊も合同演習に参加して学んだ方がいいと思っています。

他方で、日本は海に囲まれた国なので、ウクライナの経験がそのまま生かせるわけではありません。戦争になった場合、最初の戦闘は海になりますし、離島のジャングルでの闘いになる可能性が高くなります。我が国の防衛のことなので、我が国で考える主体性も当然必要です。

――国産ドローンを生産する民間企業では、テラドローン社(東京都・渋谷区)が防衛装備庁の入札で「モジュール型UAV(汎用型)教育用」300式の製造請負を1億1500万円で落札し、今年5月に契約を結びました。また、6月にはウクライナのドローン新興企業2社を買収しています。この動きをどのように見ていますか。

小泉 テラドローンが買収し、子会社化した2社は迎撃ドローンを開発していて、ロシアとの戦争でも使われています。日本技術安全保障戦略機構(JISDA)も、今年3月にウクライナの現地拠点を設立しました。JISDAによる現地調査報告書は詳細です。ドローンの世界では、日本発の技術や、日本の企業が戦闘に参加しつつあると言っていいと思います。

防衛省が進める無人アセット(無人装備品の総称)による多層的沿岸防衛体制「SHIELD」も、海空ドローンを展開する構想です。とはいえ、ドローンは大きなシステムの一部です。国家安全保障戦略の改定が現在進められていますので、ドローン戦への対応を含めた包括的な防衛政策を考えてほしいと思います。

ただ、過酷な戦いをしているウクライナとロシアの開発スピードに、平時の国がついていけるかというと難しいのも事実です。ドローンのような軍事技術をどれくらい国産できるのか、有事の際にできることを制度的に、または産業能力的に広げていくことが現実的ではないかと思っています。

「調査情報デジタル」編集部

(プロフィール)
小泉 悠(こいずみ・ゆう)
1982年千葉県生まれ。
東京大学先端科学技術研究センター(国際安全保障構想分野)准教授。
早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。
民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現職。
専門はロシアの軍事・安全保障。
著書に『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年)、『ロシア点描』(PHP 研究所、2022年)、『ウクライナ戦争』(ちくま新書、2022年)、『オホーツク核要塞』(朝日新書、2024年)他多数。

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