本当の強みは「空間効率」。電源いらずで、すき間スペースがお金になる

では、なぜこれだけ多くの企業がカプセルトイに参入しているのでしょうか。理由をひとことで言えば、「空間効率」の高さです。

同じ広さの場所でどれだけ稼げるか。その効率が、ずば抜けて高いのです。ある設置会社の実績では、2段式のカプセルトイの機械は0.3畳ほどの広さで、1台あたり月に1万円ほど売れるといいます。1畳あたりに換算すると、月におよそ3万3000円です。

ただし、これはある一社の例で、しっかり稼ぐクレーンゲームなら1台あたりの売上はもっと大きくなります。カプセルトイの本当の強みは、売上の絶対額よりも、その「身軽さ」にあります。

なんといっても、カプセルトイの機械は基本的に電源がいりません。配線工事も不要です。だから、階段の下や店舗の入り口の脇、通路のすき間といった、これまで1円も生まなかった「すき間の空間」を、置くだけでお金に変えられます。商業施設にとって、これ以上ないほど都合のいい商材なのです。

収益の中身も見てみましょう。ここで挙げる数字は、あくまで一例で、商品やお店の条件によって変わります。その前提で見ると、商品の仕入れ値は売値のおよそ3割。残りから、場所を貸す店に払う設置手数料を引きます。この手数料は駅ナカや大型施設で売上の3割から4割と大きいのですが、それでも回転すれば利益が出る構造になっています。

オリックスも宝島社も参入。もう立派な「産業」です

これだけ儲かるとなると、お金も集まってきます。

象徴的だったのが、金融大手オリックスの動きです。報道によれば、2025年に「ガチャガチャの森」を運営するルルアークを、およそ100億円で買収したとされています。金融の会社が、カプセルトイの会社を100億円規模で買う。それだけカプセルトイが成長市場であり、安定して稼げると見られている、ということです。

流通でも、玩具卸し最大手のハピネットが専門の卸し会社を傘下に収め、「ガシャココ」という専門店も自社で展開しています。2026年3月末で全国154店舗。業績も好調で、2026年3月期は経常利益が前の期から31.2パーセント増えて157億円あまり、6期連続で過去最高益を更新する見通しです。メーカーの数も、いまや約70社に増えました。

異業種からの参入も続いています。興味深いのが、雑誌の付録で一時代をつくった出版社の宝島社です。2026年6月から初のカプセルトイを発売しました。第1弾は、平成のファッション誌『CUTiE』を再現した豆本と、2000年代に流行したブランド『Cher』のミニバッグのキーホルダー。どちらも1回500円です。付録づくりのノウハウが、そのまま活きる分野なのです。

市場が大きくなり、企業の買収が活発になり、異業種までもが乗り込んでくる。カプセルトイは、もう立派な「産業」になっています。300円の小さなカプセルの中には、ランダム性を売る発明の歴史も、空間効率というビジネスの仕組みも、ぎゅっと詰まっているのです。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年6月29日配信『カプセルトイという沼:なぜ人はガチャガチャを回すのか?』から抜粋してまとめたものです。