助けを求めた先で、さらに傷つく人たち

筆者はこれまで、統計調査だけでなく、ACEサバイバー当事者への聞き取り調査も行ってきた。そこで見えてきたのは、過去の逆境だけではなく、その後の社会のまなざしによって、さらに傷つけられている人々の存在だった。

ある人は、「心療内科で成育歴を話そうとしたら、鼻で笑われた」と語った。別の人は、「小学校の担任に親の暴力を訴えたのに、まったく取り合ってもらえなかった」と話した。

当事者支援を行う一般社団法人の調査によれば、支援や相談を求めた経験のあるACEサバイバーの約3人に2人が、何らかの「二次被害」を経験していたという(出所:ACEサバイバー二次被害実態調査アンケート)。

たとえば、「被害内容を軽視された」「話を信じてもらえなかった」「あなたに責任があると示唆された」「加害者のほうを擁護した」といった経験である。しかも、それは本来、安心して相談できるはずの医療、福祉、行政、教育の現場で起きる割合が高かったという。

ACEサバイバーの中には、「誰にも頼れない」と感じながら生きてきた人も少なくない。勇気を出して相談した先で再び否定されることは、「やはり自分は助けを求めてはいけない存在なのだ」という無力感や自己否定感、そして社会不信を深めうる。

私たちは、「なぜ相談しないのか」と問う前に、「相談した結果、さらに傷つく社会になっていないか」を問わなければならない。