いまや空前のアウトドアブームだ。コロナ禍が長く続き「密」を避ける消費者心理も追い風となり、民間の経済研究所はアウトドア市場が初めて3000億円を超えると予測する。群雄割拠のアウトドアメーカー業界の中で「女性や子どもに愛されるブランド」を掲げる『ロゴスコーポレーション』。いまは7期連続の増収増益と好調だ。だが、かつては倒産寸前だった時期があった。長く不仲だった父からの要請で家業に戻り、国内屈指のアウトドアメーカーに育てた柴田茂樹社長に、その知られざる復活劇の裏側を聞いた。
スポ根ドラマ「柔道一直線」に憧れ中学・高校時代は柔道部

―――中学・高校と柔道部で黒帯の腕前だそうですね。
スポーツ根性ドラマで「柔道一直線」というのがあって、それを見て憧れましてね。当時は柔道部に入る人が多くて部員が50人ぐらいいました。その頃、剣道部は「おれは男だ!」という青春ドラマ、バレーボール部は「ミュンヘンへの道」とか「サインはV」、野球部は「巨人の星」と、スポ根ドラマやアニメの影響を受けて部活を始める人が多かったですね。柔道着はいまでも処分ができなくて、時々、手に取ります。勇気づけられたり思い出したりすることが多い大切な品物です。

―――大学進学時にお父さんと学部をめぐって揉めたとか。
付属の高校に通っていたので、大学進学時、父に学部について相談しました。父は「家業があるから商学部へ」と。私もそれがいいと思い商学部に申請を出したんです。それから2週間ぐらいして、父がちょっと酔っ払って帰ってきて「茂樹」って呼ぶわけです。「どうしたん?」って聞いたら、「経済学部に行きなさい」と。「え?商学部って言ったやん」って言ったら、「いま銀行の人と飯を食っていたら『同志社大学は経済学部の方が良い』って言っていた」と言うんです。唐突な話で思わず「え?」ってなりました。
―――しかも酔っ払って、ご機嫌さんで?
その時は既に先生に「商学部を希望」と伝えていて、先生に相談すると「いまさら経済部は無理や」と言われて、結局、諦めることになりました。自分の進路について父に初めて真剣に相談したことを簡単に翻意したことに腹が立ってね。以降、口をきかなくなりました。自分のことを一生懸命に考えてくれていると思っていた父に裏切られた気持ちでね。まあ、多感な時期ですから…。