学校側からの違和感ある対応と、第三者委員会報告書の拒否
両親は、勇斗さんの自殺を巡って、学校側の対応に違和感を抱いたきっかけがありました。

勇斗さんの父親:
「突然死…のことを言われたりですね、突然死にした方がいいんじゃないですかとですね。保護者が望むのであれば、転校にもできるんですという風なことを言い始めたので、死後1週間くらい経ってくらいですかね。それから、おや?という風に思い始めたんですね」
学校側は後に「当時は他の生徒に事実を伏せていた状況で、ご遺族の『公表を避けたい』という意向を慮り、例示として発言した」と説明していますが、あくまで“遺族の意向”として自殺を隠蔽しようとしているとして、両親は学校側に強い憤りを覚えます。
さらに学校側は、弁護士や臨床心理士らで構成された第三者委員会がまとめた、勇斗さんの自殺は「いじめが主たる要因」という報告書を拒否し続けました。学校側は、「いじめと自死の因果関係に『論理的飛躍がある』」としたほか、「遺書に『死因はいじめなどでは決してない』という記述がある点を重視すべきだ」と反論しています。
私立高校の監督 国は「県の管轄」県は「国が指導するべきこと」
背景にあるのは、行政の監督が届きにくい私立高校の現状です。勇斗さんの死後、学校側の対応に疑問を持った両親は「いじめ防止対策推進法」に違反するとして、県と国に申し立てを行いました。
いじめ防止対策推進法とは、2011年に大津市で起きた中学生の自殺事件を大きなきっかけとして、2013年に制定・施行されたもので、学校や教育委員会に対して、いじめの「早期発見」や「重大事態」への適切な対応を、法的に義務付けています。
しかし、私立学校を所管する長崎県の学事振興課からは「法律(いじめ防止対策推進法)に関する指導は自分たちにはできない。文科省から学校を指導してもらってほしい」と言われ──。
文科省からは「私立学校の認可権は県にあるから県が指導するのが筋だ」と言われ、両親は行政の谷間でたらい回しに遭いました。

勇斗さんの母親:
「(学校内でのいじめ対応について)どこに相談しても『できません、できません』みたいな感じで。うちみたいに物事が起きた時に相談するところはどこもないという仕組みはおかしい。
私立学校に子どもを通わせるというのは、ここまでやらないといけないって、きっと誰も知らないだろうと思います」
息子の尊厳を守るための提訴
勇斗さんの尊厳を守るとして、両親は立ち上がりました。

勇斗さんの母親:
「ようやくスタートラインに立つことができたと思っています」
2022年11月4日、高校を運営する法人を相手取り、およそ3200万円の損害賠償とホームページへの謝罪文掲載を求める訴えを長崎地裁に起こしました。
しかし、3年を超える裁判の中で、証人として法廷に立った当時の教師らは「いじめの認識はなかった」とする姿勢を貫きました。

さらに学校側の「最終準備書面」では、勇斗さんが書き残したメモについて「作り話の可能性がある」と主張。
学校側は、勇斗さんが好きだった『名探偵コナン』を引き合いに出し、自身で小説のように作った話(フィクション)なのではないかとも主張し、最後までいじめの存在を認めませんでした。
勇斗さんの母親:
「どうやったらこんな風に生徒が亡くなったことを簡単に考えられるのかなって。ちょっと人間としてどうなのかなっていう風に悩んだこともありました。もう本当にそれの繰り返しでしたねずっと」














