息の根止めなければ反撃される
洋介被告は、弘子さんの後頭部を、重いガラス製の花瓶で何度も殴りつけた。
不意打ちを受ける形となった弘子さんは、その身体の右側を下にして崩れ落ちる。
このとき、保健所とは電話がつながったままの状態で、職員は受話器越しに「ドンドンドン」という音や、「死ね死ね死ね」といった声を聞いていた。
「まだ生きている。息の根を止めなければ、反撃される」
「復活してくるかもしれない」
倒れ込み、動かなくなってもなお恐怖の対象だった母親。
「中途半端にやっても苦しむだけだ」
「母を生かしておくと、私の人生がめちゃくちゃになると思った」
強迫観念に駆られた洋介被告は台所へと向かうと、刃渡りおよそ11.4センチメートルのペティナイフを持ち出す。
そして、倒れている弘子さんに覆いかぶさると、その刃先を首に向けて執拗に突き立てた。
「声を聞くのが嫌だったので、声帯のある首を徹底的に狙った」
「刺している間、母の声を聞きたくなかった」
「支配されたくない、勘弁してくれ、黙っておいてくれ、喋らないでくれと思った」
「どこまでも追いかけてくるので、今生(こんじょう)の別れにしたかった」
洋介被告は、弘子さんの服を上にまくり上げると、左胸辺りにも突き刺した。
刃の全体が体内に入り込んだ。ナイフの柄の部分が折れた。その数は合わせて28回に及んだ。
全てが終わったあとの心境について聞かれた洋介被告は、次のように答えた。
「疲れたと思った」














