研究の意義と今後の展望

実験結果を総合すると、バーチャル空間における三人称視点には明確な「二面性」があります。

有効が期待される場面としては、経営会議や多部門間の利害調整会議での意思決定、人事評価面談などが挙げられます。対立が生じやすい局面で俯瞰的な視点を促すことにより、合意形成を円滑に進める効果が期待できます。

一方、適さないと予想される場面としては、メンタルヘルスやカウンセリング面談、チームビルディングや関係改善を目的とした対話、従業員や住民の意見を聴く参加型会議などが挙げられます。

共感や傾聴といった情緒的側面が重視される局面では、三人称視点は逆効果になりかねません。

この二面性を踏まえて研究グループが提案するのが、状況適応的な視点制御」という考え方です。

議論が加熱し対立が深刻化した局面では三人称視点を導入して冷静な思考を促し、議論が停滞したりメンバー間の結びつきが弱まったりした局面では一人称視点に切り替えて活発な参加や情動的な近接性を回復させます。

こうした視点制御をAIによるファシリテーション支援と組み合わせることで、より柔軟で効果的な議論運営が可能となることが期待されます。