メンパ時代のアナログ商品の3つの新基準

comugi:どのようなアナログ体験が「メンパが良い(メンタルパフォーマンスを高める)」とされるのか。ビジネスにも応用できるポイントを3点にまとめました。

1つ目は、「終わりがある」こと。SNSや動画配信サイトには終わりがなく、アルゴリズムによって次から次へとコンテンツが流れてきます。一方で、レコードは20分、カセットは30分で必ず終わります。この「終わり」があることで、私たちは自分の時間を区切ることができ、安心感を得られるのです。

2つ目は、「自分の意志がそこにある」こと。デジタルプラットフォームでは、次に何を見るかをAIが決めてくれますが、それは受動的な行為です。対して、数あるレコードの中から1枚を選び、針を落とすという行為には、明確な能動性があります。「自分で選んだ、自分でやった」という主体性が、体験の質を劇的に高めます。

3つ目は、「本物の手触り感」です。生成AIによって、画像も文章も音声も、何が真実か分からなくなっている現在、物理的な「モノ」としての存在感は、それだけで信頼の証になります。紙の手触りや、実際にそこに存在する感覚。この「オーセンティシティ(本物性)」を確認したいという欲求が、デジタルネイティブ世代ほど強くなっています。

主導権を自分に取り戻すための選択

野村:話を伺って、アナログ回帰とは「主導権を自分に取り戻すための戦い」なのだと感じました。アルゴリズムに奪われた時間を、リアルな身体性を伴う体験によって奪還しようとしているのですね。

comugi:その通りです。これら3つのポイントは、意思決定コストを下げ、ポジティブな感情を生み、偽物を疑う認知コストを削減するという意味で、非常に「メンパ」に寄与します。

野村:2026年現在、デジタルが極まったからこそ、あえてアナログを取り入れることが非常に合理的で洗練された選択肢になっている。これは、これからのブランド構築やプロダクト開発において、非常に重要なヒントになりますね。

comugi:デジタルが重要なのは変わりませんが、そこにいかにアナログな「身体性」や「有限性」を組み込めるか. それが、これからのビジネスの勝敗を分ける鍵になるかもしれません。

<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。