5月24日まで東京・国技館で行われた大相撲夏場所で、3年ぶりに関取復帰した西十両14枚目炎鵬(31、伊勢ケ浜)が8勝7敗で勝ち越した。脊髄損傷で歩けなくなる可能性もある、と宣告された状況からの復活。現伊勢ケ浜親方の元横綱照ノ富士は序二段から再起したが、元幕内力士が序ノ口まで落ちて関取に戻ったのは長い大相撲の歴史でも初だという。2横綱、2大関が休場した土俵で167㎝、107㎏の小兵の奮闘にファンは酔いしれた。
千秋楽の十両。西から炎鵬が上がると、幕内力士をしのぐ歓声と拍手が巻き起こった。相手は東十両4枚目の旭海雄(26、大島)だ。身長差16㎝、体重差53㎏。幕内42人、十両28人の計70人の関取の中で身長、体重とも最小の炎鵬は、誰と当たっても一回り以上小柄だ。升席、いす席からはしこ名入りの応援タオルが打ち振られていた。
立ち合い。右で張った後、頭で当たった。下から手四つ。一度離れて、互いに距離を取りながら得意の左を差し込んだまでは良かった。だが、相手に十分な右上手を引かれて胸を合わされて寄られると、崩れるように浴びせ倒された。完敗。だが、立ち上がった炎鵬の背中には温かい拍手が鳴り響く。それは礼をして土俵を降り、花道の奥に消えるまで続いていた。
風呂を終え、まげを直し、浴衣に着替えた炎鵬は笑顔で、報道陣の前に現れた。通常の取材は支度部屋で上がり座敷に座って髪を整える際に話を聞く。だが、今場所の炎鵬は、まだ取組を控える幕内力士らも大勢いる上、報道陣が多数押し掛ける。このため、周囲への配慮で、西から出番の時は支度部屋の外の通路が臨時インタビュー場になっていた。
「体の力を使い果たしてクタクタ。きょうも気持ちで体を動かしましたが、自分の今の力が分かりました。怪我無く、15日間相撲が取れてホッとした。連日、たくさんの声援をもらって、喜びと幸せを感じていた。何とか生き残れたので、次も頑張ります」
「どうなるか、わからなかった」という初日は、ちょうど母の日。地元石川から母を呼び寄せ、感謝の白星を送った。そこから破竹の5連勝。2連敗のあと、2連勝。一気に勝ち越すか、と思われたが、力士が一番疲れを感じるという10~12日目に3連敗した。13日目も元幕内明生相手に土俵際まで攻め込まれた。だが、相撲にかける執念と培ってきた勝負勘が窮地を救う。得意の左下手を取ると、相手の外掛けを逆に足を跳ね上げるようにした下手投げに切り返した。念願の8勝目。最後はまた2連敗したものの、持てる力を出し切った15日間だった。














