時間軸の差か~見えないトランプ氏の対中戦略~

それにもかかわらず、長期的な米中の競争にどのように臨むのか、トランプ大統領の対中戦略は今回の会談では全くと言っていいほど見えてこなかった。

アメリカ側から見た場合、中国抑止に向けた本質的課題には、巨額の対中貿易赤字、中国による政府の補助金を用いた過剰生産、知的財産の剽窃、南シナ海で繰り返される軍事的威圧などがある。

アメリカ国内では共和党・民主党問わずこうした構造問題の解決を求める声が広がっているにもかかわらず、トランプ氏は中国との間で本格的に提起する姿勢を見せなかった。貿易合意という短期的な利益を得るためには障害になるという判断だろう。

一方で、中国側にはアメリカとの緊張緩和を演出しつつ、アメリカに対抗できる力をつけていこうという戦略がみられる。半導体、AIといった先端分野で脱アメリカ依存を目指して独自の技術開発を急ぐ一方、米国産農産物の購入などでアメリカ側を中国市場に依存させ続け、アメリカの首根っこを抑える。現時点ではアメリカと争っても勝てないことを冷徹に認識しているがゆえに、爪を研ぐための時間を稼いでいると言える。

トランプ氏の時間軸にあるのは今年11月の中間選挙、長く見ても2029年1月の自身の任期の終わりまでだろう。一方、習近平氏は2035年を見据えた超長期政権の構想を持っていると言われる。両首脳の時間軸の違いは、米中関係に大きな影響をもたらすことになりそうだ。

〈執筆者略歴〉
涌井 文晶(わくい・ふみあき) JNNワシントン支局長
2004年TBS入社。政治部と経済部で総理官邸・経済産業省・日本銀行などを担当したほか、「NEWS23」の制作を担当。経済部デスクを経て、2023年4月からワシントン特派員。2025年7月から支局長を務める。

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