でも、株・投資信託は持っていない人がほとんど
最後に、やっぱり「投資はお金に余裕がある人がやること」なのかを確かめたく、世帯月収ランク別に株券と投資信託の所有状況を集計。

結果の帯グラフを見ると、全体では17%の株券・投資信託所有率(どちらか一方または両方所有の合計)は、世帯月収ランクが上がるほど増加。月収60万円超の高ランク層では実に31%に達する一方、世帯月収を回答しなかった層では13%と、大きな差が開いています(注4)。お金のある層のほうが投資をしているのは確かなことのよう。
世界中で戦争や紛争が絶えず、石油も手に入りにくくて物価も高い。手持ちの資産も、積極的に増やすことを考えないと、ただ持っているだけでは目減りするばかり。これは誰でも思うこと。
最高値更新中の株ならリスクを取って大儲け、手堅くいくなら投資信託。出来れば現物資産の「有事の金」もほしい。これも誰でも願うこと。
しかし、実際に株券や投資信託を所有しているのは全体の2割弱、世帯収入高ランク層でも3割。元手とやる気が揃うと投資が始まる気がしますが、今のところ、両方揃っているのはまだ少数の模様(注5)。
振り返れば、1980年代後半のバブル期も投資への関心が高かったと思いますが、その動機は純粋に「儲けたいから」だった気がします。昨今は「そうしないと生活が苦しくなるから」という要因が加わっていて、世間にはバブル期のような浮かれた気分など皆無。生活が思うに任せない昨今の日本の状況は、ギャンブルのような投資ではなく、地に足の着いた投資による蓄財が根付く土壌になるのかも!?
注1:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列が、1970年代から毎年実施している大規模ライフスタイル調査です。同じ回答者にメディア行動や価値観、個人材・世帯財の購入などを総合的に調査するシングルソースデータです。1999年までは5月と10月の年2回、2000年以降は11月の年1回実施されています。対象者は13歳~69歳男女ですが、資産の話を扱う今回は20歳~69歳で集計しています。
注2:同じ質問・選択肢でも、選択可能な回答数によって結果が大きく異なることについて、本コラムで以前取り上げました(調査情報デジタル、2024年7月20日公開)。
注3:2019年6月に、金融庁・金融審議会「市場ワーキンググループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」に、高齢無職の夫婦世帯は老後30年間の生活資金が2,000万円程度不足するという試算が掲載されました。「このことから老後2000万円問題が話題になり、多くの人が自身の老後に向けた資産形成や生活設計を見直すきっかけ」となったそうです(ウィキペディア)。
注4:それぞれの帯グラフで、「株券・投資信託の両方所有」「株券のみ所有」「投資信託のみ所有」「所有なし」の集計結果を小数第一位で四捨五入した数値を表示しています。そのため、合計が100%にならない場合があります。また、本文中の「どちらか一方または両方所有」の合計は、元の集計結果を合計した後で小数第一位を四捨五入しており、グラフに表示された数値の合計とは一致しない場合があります。
注5:ここでは話を簡単にするために株・株券や投資信託の所有だけに注目しています。もちろん投資は、株・株券や投資信託だけでなく、保険や外国為替なども含めた金融商品や、「有事の金」に土地・不動産など現物の取引などでも行われています。
引用・参考文献
●江利川滋「データからみえる今日の世相~「いくつでも、お答えください」にどう答えるか」(調査情報デジタル、2024年7月20日公開)
●金融庁 金融審議会「市場ワーキンググループ」報告書の公表について
●「老後2000万円問題」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2025年2月25日(火) 05:52 UTC
〈執筆者略歴〉
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼務。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














