アジア人俳優に「入る余地ない」 初めての“試練”

シェイクスピア作品で立った苦い思い出のグローブ座

「俳優というものへの憧れは小さいころからあったんだと思います。一度イギリスで暮らしていた経験もありましたし、行きたいという気持ちが強かったので」

しかし、俳優人生のスタートは決して平坦なものではなかったと言う。言葉が異なるロンドンのグローブ座で行われたワークショップで俳優としての初めての試練が訪れた。

「グローブ座が企画したワークショップの延長で、名だたる俳優たちとシェイクスピアをやることになって…。 あの時は萎縮しました。授業でちょっとやったぐらいの素人がイギリス人をはじめプロの俳優と同じ土俵でシェイクスピアをやる。シェイクスピアをネイティブで堂々と語れる人たちとは違って、僕にとっては第二言語でもないぐらい、第三言語でお芝居をするようなものでしたから」

俳優としてのイギリスでの活動は、発音や言語感覚などの言葉自体の違いはもちろん、文化的背景の違いも大きな壁として田渕さんの前に立ちはだかった。

「僕がイギリスでお芝居を始めたころは、そもそもアジア人のための役がほとんど存在しなかった。仮にあっても、かなり限定的で、いわゆるステレオタイプに寄った役が多かった印象です」

白人俳優がアジア人役を演じるケースも珍しくなく、「自分たちが入り込める余地が少ない」と感じる場面も多かったと語る。

20代の頃に通っていたパイナップルダンススタジオ