「価値観は確実に変化」演劇界にも“多様性”の波
400年以上の歴史を持つイギリスの演劇界にも、多様性への尊重が大きな影響を与えている。
近年、舞台や映画などでは役柄の背景(人種、文化、身体的特徴など)と、実際に演じる俳優のアイデンティティや背景を合わせる「オーセンティック・キャスティング」が急速に浸透してきている。文化的なリアリティを追及する側面もあるが、 多様性の尊重という文化的な意味合いも強い。
メイとサツキの父親・タツオ役の田渕さんはもちろんだが、メイ役はシンガポール出身のVictoria Chen、サツキ役のエイミ・オクムラ・ジョーンズは日英にルーツに持つ香港育ちで、ほかの出演者たちもそのほとんどがアジア圏にルーツを持つ俳優で構成されている。
そのような変化に対して田渕さんは前向きだ。
「イギリスは多民族国家になって久しく、コンプライアンスは確実に厳しくなっていて、価値観は確実に変わってきていると感じます。でもこれからは、日本人であること自体がひとつの個性になる。むしろ、自分が日本人であることをどう活かしていくかが大事だと強く感じています。特にロンドンは世界中から俳優が集まってくる場所なので」
「計画よりも“流れ”」田淵さんが切り拓く道
生成AIの登場で世界が目まぐるしく変化をする中、今後の展望について田渕さんが重視するのは、計画よりも“流れ”だと言う。
「正直に言うと、あまり細かくは決めていません。その時に面白いと思える作品や人と出会えたら、そこに飛び込んでいきたいと思っています。目まぐるしく業界は変わっていますし、昨今はAIも入ってきている。それでも、舞台でのお仕事を続けていけたらいいなとは思います。日本でも舞台が出来たらいいですね」
イギリスのロンドンで経験を積み重ね、自らの立ち位置と可能性を模索し続けながら、日本人俳優としての道を切り拓いてきたパイオニア・田渕大。
目まぐるしく変化する演劇界で、どの舞台に飛び込むのか。さらなる活躍が期待される。今後の彼の活躍を日本からぜひ注目してほしい。
【田渕大 プロフィール】
愛知県長久手市出身。1989年にイギリスの高校へ留学。慶應義塾大学文学部哲学科を卒業後、イギリスの演劇学校 Rose Bruford College へ再留学。フランスの演劇教師フィリップ・ゴーリエのワークショップなどに参加したのち、ロンドンを拠点として俳優・声優活動を続ける。舞台『Hergé's Adventures of Tintin』(Rufus Norris演出)、『The Long and the Short and the Tall』(Josie Rourke演出)、『The Overcoat』(Gecko Theatre)、映画『Spectre 007』、Netflixのドラマ『Giri / Haji』などのほか、声優としての出演作品も多数。















