「小さなボールが大きな流れを動かす」
中国の習近平主席は、アメリカとの「ピンポン外交」55周年記念大会に祝賀メッセージを送りました。メッセージにはこのように綴られています。
「55年前、中国、アメリカそれぞれの指導者は、卓越した政治的知恵と戦略的先見性を持ち、再び両国国民の友好往来の扉を開きました。まさに『小さなボールが大きな流れを動かす』という歴史的美談を生み出したのです」
「ピンポン外交」という言葉をご存知でしょうか。1971年4月、名古屋で世界卓球選手権が開かれました。男女の卓球で世界ナンバーワンを決める大会です。大会期間中、こんなハプニングが起きました。アメリカのある男子選手が移動の際、間違えて中国選手団用のバスに乗ってしまったのです。当時、中国は毛沢東が主導した文化大革命のさなかでした。アメリカは「敵国」とされ、アメリカの選手との接触が禁じられていた時代です。
卓球の世界選手権といえば、今年は昨日5月10日までロンドンで開かれていました。団体戦で日本チームは男子、女子ともに銀メダルという結果でした。私が今回紹介しているのは、今から55年前の、同じ世界卓球選手権での出来事です。
アメリカ選手が間違って乗り込んだバス車内の様子に話を戻しましょう。当時、アメリカと中国の間に国交はありません。中国の選手やコーチたちは、アメリカ選手の突然の登場に驚き、困惑しました。接触したくないのは当然です。しかし、中国男子チームのエース、荘則棟(そう・そくとう)選手はアメリカ人選手と笑顔で握手し、カバンから取り出した中国製の絹織物をプレゼントしたのです。
この出来事をきっかけに、アメリカと中国の選手団の間に交流が芽生えました。中国側は閉幕後、アメリカ選手らを北京に招待。彼らは帰国せずに日本からそのまま中国に渡り、北京で中国の選手たちと交流試合を行いました。そして翌年1972年のニクソン大統領の電撃訪中、1979年の米中国交正常化に至ったのです。中国選手団のバスに誤って乗車したハプニングが始まりでした。
卓球の球の直径はわずか約4cm。そのボールが歴史的和解の扉を開いたことから、「ピンポン外交」と呼ばれています。














