「核心部分で一貫、信用できる」
裁判の主な争点は、男性の難民該当性を、どう判断するのかにあった。
「難民には当たらない」とする国(入管)の主張と2審東京高裁判決を対比してみたい。
▽供述の変遷と信用性
<国>
「SCNCのメンバーとして活動し、警察から逮捕、抑留、拷問を受けたという男性の供述部分は、逮捕、拷問を受けた時期や回数という重要な事実について不合理な変遷を繰り返し、拷問や暴行の程度が当初よりも苛烈になるなど信用できない」
<高裁判決>
「男性の陳述、供述は、警察に逮捕された年月日、場所、逮捕時の状況、抑留の期間と処遇、拷問・暴行の有無・態様などについて具体的かつ詳細で、若干の変遷があるものの核心部分・大筋において一貫している。顔面、肩、下腿などの複数の目立った傷跡の写真、整形外科専門医の診断とも整合する。米国務省や国際人権NGO『アムネスティ・インターナショナル』作成の報告書も、逮捕、抑留、暴行の核心部分にあたる具体的な供述を客観的に裏付ける。男性の供述の核心部分は基本的に信用できる」
▽SCNCについての知識
<国>
「SCNCの加入時期や活動内容という重要な事項についても合理的な理由がないのに供述を変遷させ、活動の基本的知識も乏しい」
<高裁判決>
「SCNC加入の時期を変遷させたほか、独立宣言の時期や大統領の任命の有無などSCNCの知識を正確に把握していない供述も見られるが、入国後間もない時期で記憶を喚起する手掛かりとなる手持ちの資料が乏しい状況がうかがわれ、SCNCでの地位や活動内容と併せて検討すると、時の経過による記憶の減退の影響もあって不正確な供述をしたとしても不自然ではない」
▽カメルーン出国と難民申請の経緯
<国>
「逮捕状の発付や指名手配を知って出国を決意したというのに、旅券発給から4か月後、日本のビザ取得からでも2か月後に出国し、日本に入国する際に渡航目的を『商用』と申告し、難民として庇護を求めなかったのも不自然、不合理だ」
<高裁判決>
「出国・渡航の手はずを調えるまでに一定の時間を要することはあり得る。逮捕状の発付などの客観的裏付けはないが、身体拘束などの危険を感じて出国を決意し実行に至った経緯や入国2日後に難民申請したことからすると、不自然、不合理とまでは言えない」
▽政府が男性個人を迫害対象として特定、注視したか(個別把握説)
<国>
「出身国情報を通覧すれば、一般に、単にSCNCのメンバーであることを理由に政府による拷問を伴う身体拘束は認められない。男性に逮捕、抑留、拷問などの危険があったとは認められない」
<高裁判決>
「出身国情報の中には、主要メンバー以外の者が逮捕されたり、集会参加の自由が制限されたりした報告があり、SCNCの末端構成員に過ぎない男性について、政府当局から拷問を伴う身体拘束、その他の人権の重大な侵害の危険があることは否定できない」
▽偽造が疑われる文書の証拠提出
<国>
「偽造が疑われるSCNC作成名義の会員証、本国の総合病院作成名義の医学証明書などの文書を証拠提出したことは、SCNCのメンバーであること自体を疑わせ、供述の前提を否定する重大な事情だ」
<高裁判決>
「いずれも偽造の疑いがあることは否定できないが、1回目の難民不認定処分の後、難民支援NGO職員から『証拠があった方がいい』とアドバイスを受けて、妹に証拠の送付を依頼した。(SCNCの)会員証などの文書を提出する前の本人の陳述、供述の核心部分は、その後も大筋で一貫しているうえ、少なくとも1回目の難民申請の段階で男性自身が会員証などの文書の作成に積極的に関与したとは認められない。偽造された疑いがあることが、供述の信用性を揺るがすとは言えない」
最後の「偽造が疑われる文書の証拠提出」に注目したい。これは裁判所が、難民申請者は、そもそも供述を裏付ける証拠を本国から持ち出すこと自体が難しいという苦しい事情を考慮して、「仮に疑わしい文書が提出されたとしても、それ以外の証拠で正しく難民性を判断しますよ」と宣言したに等しく、画期的だ。














