石川以外の分布は「宮崎」「大分」「鹿児島」

興味深いのは、その分布です。国内の生息地は、石川県のほか、本州以外では大分県と宮崎県、そして鹿児島県の本土部と種子島に限られます。

なぜ、九州から遠く離れた石川県内が生息地になっているのでしょうか?

石川県ふれあい昆虫館(白山市)の学芸員・福富宏和さんによると、明確な理由は判然としていないものの、鍵は「砂」と「川」にあるようです。

貴重な砂浜が残るイカリモンハンミョウの生息地=2024年6月、志賀町(石川県ふれあい昆虫館提供)

イカリモンハンミョウの幼虫が生息するには、適度な湿り気のある砂浜が欠かせません。幼虫は砂浜に穴を掘り、巣穴の中には、波をかぶっても溺れないよう水の侵入を防ぐ「隔壁」をつくります。羽咋市から志賀町の生息地には、粒が細かくて凹凸のある保水力の高い砂浜が残っており、幼虫が巣に「水没対策」を講じることができる環境になっているのです。

そして、この貴重な砂浜に砂を供給しているのが、「暴れ川」としても知られる手取川です。白山を源流とする手取川から大量の土砂が日本海に流れ込み、対馬海流に乗って能登の海岸に運ばれ、粒が均一で細かい砂浜が形成されているのです。白山、手取川の自然の恵みが、生存に適した環境をつくっているのです。

*「後編」絶滅の危機乗り越え、波打ち際で何匹も見られるまでに…