かけつけた母と面会 その夜「執行宣告」

幕田大尉の生家にあったこどもの頃の写真

弁護士からの葉書を受け取り、急遽、上京の準備を整えたであろうトメが、スガモプリズンへ面会に訪れたのは、4月5日水曜日のことだった。その日の夜、幕田は死刑執行のために死刑囚の棟から別の棟へと移され、7日金曜日に日付が変わってすぐ、命を絶たれた。面会の翌日6日に書いた幕田の遺書の中で、思いがけず「母と最後の面会」となったことを記している。

<幕田稔大尉の遺書(昨日今日の日記)>
稔は、今朝は五時少し前、目をさまし、今日は煙草はいくらでも吸えるのだから早速、煙草を床の中でくゆらし、復員した時、母上が私の為に買っておいてくれた甘い煙草を毎朝床の中でふかした事などを連想していました。

昨日は偶然の幸運か、仏の知らせか、半年ぶりで母上に会って本当によかったと考えています。大体、覚悟という覚悟はしていませんでしたが、どうも近い中に処刑があるかも知れないとは考えていました。昨日会った時は実の所もう一度ぐらい会えるかも知れないなど考えていたわけです。まさか昨日の晩、言渡しがあるとはあの時知らなかったもので極めて朗らかな気持ちで会えて本望です。