観客との“共犯関係”が生む舞台の熱

ドラマ『未来のムスコ』より

演劇という表現については、「“ないこと”が面白く、同時に難しい」と切り出す。

「今回『未来のムスコ』で劇中劇を作った時に、より強く感じました。映画やドラマは画面の中に映っているものが基本的に全てですが、演劇はお客さんがその場にいる。だからこそ、うそが見えやすい。どうしても作り込み切れていない部分も出てくるんです」。

その中で、場面転換の多い作品では、舞台上で“ないものをあるものとして”成立させなければならない。

「ないものをあるものとしてどう演出するかが、演出家や劇団の力の見せどころです。お客さんが一緒に想像しながら見る、“共犯関係”のような感覚。演者とお客さんが一つの画を共有する感じが、面白さでもあり難しさでもあると思います」と演劇の醍醐味を語る。

公演ごとに空気が変わるのも舞台ならでは。「初日は神経をビシビシと張り巡らせています。お客さんも緊張感を持って観に来られるので、何が起こるか分からないスリルがあります。ハプニングから生まれるグルーブもあれば、公演を重ねることで作品が成熟していく感覚もある。そこは映画やドラマとは違うところです」と語気を強める。

自身は初日の“ドタバタ感”も好む一方、観客としては千秋楽を好んで観ることが多いという。「お客さんによって初日が好きな方もいれば、千秋楽が好きな方もいる。公演期間の中で舞台が変わっていくところは、独特の魅力です」と目を細める。