李強首相の「緊張」とトランプ氏への「忖度」

全人代初日のもようは、インターネットで同時配信され、私も見ることができました。舞台のひな壇の中央で無表情を貫く習近平氏。その前方で約1時間の政府活動報告を読み上げたのが、序列2位の李強首相です。

李首相の様子は、まるで背中に習氏の鋭い視線を感じながら「優秀な能吏」を演じているかのようでした。その緊張感からか、のちに発表された政府活動報告全文の内容と読み比べると、李首相はいくつかの重要なフレーズを読み飛ばしていました。そのひとつが、以下の箇所です。

「覇権主義や強権政治に断固反対する」

3週間後にトランプ大統領の訪中を控えているため、刺激を避けたかったという解説もあります。ただ、この「覇権主義や強権政治に断固反対する」という部分は、公式発表されています。「読み飛ばし」を、中国指導部のどのレベルが決めたかはわかりませんが、部下が上司の顔色を窺い、独断か忖度によって公式文書を読み飛ばす。この一幕こそ、現在の中国には「トップはいても、それ以下はいない」という実態を象徴しています。