「物をつかむこともできない」し「ひとりで食べることもできない」。ブラジル・アマゾンで先住民の子どもたちに健康被害が広がっています。アマゾンの森の奥深く「金の違法採掘現場」から流出する水銀が原因と指摘されています。現場を取材しました。
■「一人で食事できず・・・」先住民の子どもたちに健康被害

アマゾン川の支流をボートで5時間ほど遡った奥地に、先住民ムンドゥルク族の集落があります。

8歳のアレックス・カロくん。出生時に異常はみられなかったものの、成長とともに障がいが明らかになってきました。
アレックスくんの父 アオド・カロさん
「物をつかめず、一人で食べることもできません。いろいろなことができません。座ることもできません。少ししか話すことができません。(医師の診療でも)アレックスのどこに問題があるのか、今まで何も答えが出ていないのです」
異変が起きているのは彼だけではありません。先住民集落の訪問診療を20年にわたり続ける医師は・・・
サンタレン州立病院 ジェニングス医師
「私が最も懸念しているのが、脳の異常とともに生まれてくる子どもです。この地域では、実際、多くの子どもが、このような症状を持っています」
さらに医師は、死亡例にも着目しています。
ジェニングス医師
「私が把握しているだけでも、この地域全体で100人以上が、神経系の異常で亡くなっています。そのほとんどが子どもでした」
何が原因なのでしょうか。

国立の研究機関による調査で、アレックスくんの毛髪から検出されたのは、国際基準を大きく上回る高濃度の「水銀」でした。

ジェニングス医師
「水銀は、母親の胎盤を通して胎児の脳に異常を引き起こします。先住民地域には、歩けない子どもや脳性麻痺の子どももいます。おそらく水銀中毒によるものと考えられ、体系的に研究することが必要です」
地域の医療環境では精密な検査が難しく、明確な要因は未解明であるものの「水銀の可能性が高い」とみられています。