自然な言語でAIに演技指導ができる
イレブンラボの音声生成技術は、スタジオや機材、多くのスタッフなどを必要としてきたこれまでの音声アフレコのプロセスを、一台のパソコンで実現する画期的なものだ。それによりクリエイターは、より創造的な工程に時間を使うことができるようになる。
さらに、声優が発している日本語を、声優の声のまま他の言語に変換する。例えば、日本のアニメを英語版に変換する場合、25分番組であればファーストテイクは35分ほどで完成する。
単に変換するだけでなく、セリフの変更、それに演技指導も可能だ。演技力は声優の魅力の一つでもある。どのように演技指導するのかを田村氏に聞くと、その方法は「自然な言葉で指示するだけ」で、短いセリフの指導ならわずか数文字の記載で済むと答えが返ってきた。
「本格的な制作をする場合には、AIに対して演技の指示を出すなどして細かく調整することが可能です。他の言語に変換されたセリフを聞いて、日本語での演技をもっと再現したいと思えば、『ここで叫んで』とか、『恥ずかしそうに』とか、『囁くように』といった指示を出すことで、AIの演技力を高めることができます」
この演技の再現性の高さが、業務提携にいたった大きな要因でもある。南沢氏は、生成AIの活用が日本のIP収益構造を変え、声優の第二のビジネスの始まりになると期待している。
「日本のコンテンツはアニメーションを中心として、海外で大きく成長しました。その一翼を担っているのは声優たちだといつも言われます。しかし、コンテンツ産業の海外での売り上げが6兆円規模と言われている中で、海外で作品が売れても海外版は現地のスタッフが吹き替えているので、私たちの業界にロイヤリティが入ることはほとんどありません。あくまでも出演料がメインの収入です。
それが生成AIによってオリジナルの声を英語版や中国語版などに変換できれば、声優に権利が発生します。これは第二のビジネスの始まりだと感じています。手塚治虫先生の鉄腕アトムが日本初のアニメーションとして放送されて、これまで進化してきた中で、言語が進化するのは初めてです。数十年に一回現れる大きな改革の時ではないでしょうか。もちろん、声優やスタッフが受け入れるには時間も必要だと思いますが、そんなに時間もかけられないので、作りながら話をしていきたいですね」














