「外国人労働者が日本人の賃金を下げる」という誤解

橋本さんは各政党の政策について、いくつかの問題点や誤解を指摘します。

外国人の土地取得規制について、「重要施設周辺の土地取得を外国人だけ規制するのは疑問です。日本でのテロ事件はほとんど日本人によるものであり、公認された外国人テロは1件しかありません。外国人だけを狙い撃ちにしても市民の安全は守られず、国籍問わず調査するべき」と述べました。

また「偽装難民」という表現について、「難民申請者を偽装難民と見るか、保護すべき対象と見るかで大きく立場が分かれています」と指摘。難民認定委員会の創設を提案する党が複数ありますが、「日本には他の先進国にある国内人権委員会がないため、まずそれを作らないと難民申請者だけの委員会は作りにくいのでは」と現実的な課題を挙げました。

また、外国人と生活保護に関する誤解も広がっています。

「外国人が生活保護を受けられるのは、永住者、特別永住者、日本人の配偶者など限られた在留資格の人だけ。全生活保護受給世帯のうち外国人が筆頭の世帯は2.8%で、この比率はほぼ変わらない。そのうち約半数は韓国・朝鮮籍の方で、1980年代まで年金に入れなかった歴史的経緯があります」

外国人労働者が日本人の賃金を下げるという主張についても、「経済学者の研究では、そういう傾向は見られないというのがほぼコンセンサス。むしろ外国人労働者の増加で景気が改善し、全体の賃金が底上げされる」と指摘しました。

政治家が取り上げることで「かえって不安感」

橋本さんは「政治家が『外国人問題』を取り上げることで、かえって不安感が出ている面もある」と指摘します。

「移民問題・難民問題の安全保障問題化と呼ばれる現象です。霞が関はちゃんとデータを出しているので、有権者側がどれだけ賢くなれるか、SNSから流れてくる情報ではなく、自分から取りに行く姿勢が重要」と強調しました。

また、これまで外国人の社会統合が地方自治体やNGOに「丸投げ状態」だった問題についても触れ、「2024年1月23日の閣僚会議で、日本語学習や日本のルール学習プログラムを国が責任を持ってやっていく方向性が初めて示されました。20年ほど外国人支援団体や専門家が言い続けてきたことが、ようやく政府の文書に載るようになった。これは大きな一歩」と評価しました。

政策が「書き込むだけでなく、現実味と実効性を持つ形になるのか、事実に基づいた政策になるのか」を見極めながら、各党の政策を見ていく必要があると締めくくりました。

政治の場で外国人に関する政策が注目されることは、課題への取り組みが進む可能性がある一方、選挙のための政争の具となるリスクもはらんでいます。有権者には、感情に訴える言説に振り回されず、事実に基づいた冷静な判断が求められています。

(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2026年2月2日放送「衆院選2026:各党の多文化共生政策を徹底比較」より)