衆議院選挙(2026年2月8日投開票)では、多文化共生や外国人をめぐる政策が注目されています。深刻な人手不足を背景に、国内の外国人労働者数は過去最高の257万人を突破し、外国人なしには成り立たない産業も出てきました。しかし、その一方で、SNS上では根拠に乏しい排外主義的言説が拡散し、特定コミュニティへの攻撃が深刻化しています。

こうした状況を踏まえ、難民・移民政策の研究者で、外務省、国際移住機関(IOM)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)での勤務経験もある国際基督教大学(ICU)准教授の橋本直子さんとともに、衆院選を通して示された各党の多文化共生政策を読み解きました。

(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2026年2月2日放送「衆院選2026:各党の多文化共生政策を徹底比較」より)

参院選と比較した各党の「変化」

まず、橋本さんは、各党の公約の変化について「昨年の参院選と比べると、多くの党が外国人政策を公約の中に入れるようになりました。メインメニューの一つに位置づけるようになった」と指摘。その上で「これは功罪両方ありますね」と述べ、注目が集まることで政策が前進する可能性を評価しつつも、政治の側の姿勢には懸念を示しました。

「選挙での得票を狙って、外国人政策を政争の具にしている党も見受けられ、そこは心配しています」。

橋本さんは、外国人に関わる政策が争点化する局面で、実態や統計に基づかない議論が先行しやすいとし、社会の分断をあおる言説が広がることへの警戒感をにじませました。

各党の「外国人政策」は4つの方向性に分類できる

橋本さんによれば、今回の衆院選における各党の外国人に関する政策は、大きく4つの方向性に分類できるといいます。

1. 外国人受け入れ反対

「日本は日本人だけでやっていこう」というベクトル。ただし、現実的かどうかは議論の余地がある。

2. 外国人の人権・権利保障重視

外国人の人権や権利保障を重視し、非正規滞在者にも在留特別許可を与える方向性。非正規滞在者の集団合法化は中長期的な影響や国境管理への影響を慎重に考える必要がある。

3. 外国人問題への対処を強調

外国人による犯罪や不法滞在、土地取得問題などを強調し、それらに「断固として戦う」姿勢を前面に打ち出すアプローチ。橋本さんは「省庁が出しているデータよりも誇張している面もある」と指摘。

4. 共生社会構築への取り組み

外国人増加を所与のものとし、日本語教育や文化・行動様式の相互理解を進める共生社会の構築を目指す方向性。

「必ずしも各党がこの4つのうちどれか1つに分類されるわけではなく、相反するような政策を一緒に入れている党もあります。また一般的には逆の立場と思われる党が、同じ政策を提案していることもあり、右左やリベラル・保守という分かりやすい座標軸には入れにくくなっています」と橋本さんは説明しました。