ドラマの制作現場への導入とAIの立ち位置

ここで、日曜劇場『VIVANT』での取り組みについても触れたいと思います。

今回、私たちはGoogleの動画生成AI「Veo3」を制作工程の一部に導入することを決めましたが、このプロジェクトの大きな特徴は、導入のきっかけが「現場からの提案」であった点にあります。

デザイナーや演出といった、最前線で「表現の限界」と向き合うクリエイターたちが、自らの課題解決のために技術を結びつけたことが全ての起点となりました。プロデューサーやIT部門が主導したのではなく、あくまで「もっと良い映像を作りたい」という現場の純粋な情熱がAIを呼び寄せたのです。

私たちが強調したいのは、「AIにドラマを作らせる」のではなく、クリエイターのビジョンを拡張するための「強力なツール」として活用するということです。

ドラマの根幹であるストーリーや俳優の皆様の演技、そして魂のこもった演出は、これまで以上に人間が全力を注ぎます 。AIが担うのは、制作フローを支える補助的な役割に過ぎません。AIに「作業」を任せることで生まれた時間的余裕を、本当にこだわりたい「人間の感情表現」に再投資する。これこそが、クリエイティブの現場におけるAI活用の本質だと考えています。

ちなみに、数ある動画生成AIの中でGoogleの動画生成AI「Veo3」に注目したのは、制作陣が普段交わしているような自然な言葉を、生成AIへの命令文である「プロンプト」として使用することができ、直感的にブラッシュアップしていける親和性があるからです。チームで議論しながら作品を磨き上げる、従来のものづくりに近い感覚で使える点が、採用の背景にあります。