(田中伸一裁判長)
「主文、被告人を無期懲役に処する」

 言い渡された瞬間、山上徹也被告(45)はほとんど表情を変えず、その後も手元の資料に目を落としながら、淡々と裁判長の言葉に聞き入っていました。

 2022年7月、奈良市で参議院選挙の応援演説をしていた安倍晋三元総理が銃撃され、殺害されました。白昼堂々、総理大臣経験者を銃撃するという凶行に及んだのが、山上被告。犯行に用いたのは手製のパイプ銃でした。

 事件から3年あまりを経て始まった裁判員裁判。山上被告は起訴内容を認めました。そして、犯行に及んだ動機を次のように語りました。

(山上徹也被告)
「統一教会に打撃を与えるということの実現として引き金を引くというのが、最終的に到着したことだった」

 山上被告が4歳の時、父親が自殺。また、兄には重い病気がありました。こうしたなかで母親は旧統一教会から勧誘を受け、入信します。勧められるままに献金を続け、その総額はおよそ1億円に。山上被告や兄は大学進学を諦めるなど、家庭環境は悪化。兄は、自ら命を絶ちました。

(山上徹也被告)
「(旧)統一教会に一矢報いるというか、打撃を与えることが自分の人生の意味だと思いました」

 山上被告が安倍元総理を狙ったきっかけの1つとされるのが、安倍氏が旧統一教会の関連団体に寄せたビデオメッセージでした。そして、最終的なターゲットとして安倍氏を選んだ理由を問われると…。

(山上被告)
「安倍元首相は私の認識だと、旧統一教会と政治のかかわりの中心にいる方だと思っていましたので。他の政治家だと意味が弱いと思いました」

 検察側は「特定の団体にダメージを与えるために暴力的手段に訴えるなどということは、法治国家では絶対に許されない」と糾弾し、無期懲役を求刑。弁護側は山上被告の過酷な生い立ちが「犯行と一直線に強く結びついている」などとして重くて懲役20年にとどめるべきと主張しました。

 裁判を傍聴し続けたジャーナリストの鈴木エイトさん。今月、拘置所で山上被告と面会したといいます。

(鈴木エイト氏)
「普通に何か会話をしてる中で彼が唐突に『僕は(旧)統一教会のことはやっぱり譲れないので』ということを言われた。やっぱりお兄さんの死がずっと引っかかっていたということも含めて、やはりそこが一番のポイントなんだと彼は言いたかったのかな、という感じを受けた」

 迎えた判決の日。傍聴券の抽選倍率は22.1倍に達しました。そして、午後1時半。奈良地裁は山上被告に無期懲役を言い渡しました。最大の争点となった、被告の生い立ちについて、「旧統一教会に激しい怒りを抱くのは、不遇な生い立ちからすると相応で理解できないとは言えない」とした一方で…

(田中伸一裁判長)
「社会的に孤独な状況であったが、支援を受けることをしていなかった。殺人を決意し、手製銃を作成した意思決定には大きな飛躍がある」

 そのうえで、こう結論づけました。

(田中伸一裁判長)
「被告の生い立ちが今回の事件の背景や遠因であることは否定できないが、被告の意思決定に大きな影響があったとは認められず、短絡的で自己中心的な犯行だ」

 傍聴した人は・・・

(裁判人)「人を殺したのは悪いけど、結構生い立ちをのことを色々考えると誰もがあのように進むかどうかわからないけど、考慮してほしかった部分があります」

(傍聴した鈴木エイト氏)「認定内容を聞くとちょっとひどいなという感じがしました。結局社会から居場所を奪われた人に帰ってくる来る余地を与えないような判決になったと思うので」

 情状酌量が一切認められなかった形の弁護側。判決後の会見で「主張が認められなかったのは遺憾である。控訴するかどうかについては、被告と協議のうえ判断する」とコメントしました。

 一方、判決を受け、安倍元総理の妻・昭恵さんは「突然の夫の死からの長かった日々に1つの区切りがついたと感じています。被告人は自分のしたことをきちんと正面から見つめ、私のかけがえのない家族である夫の命を奪い去った罪を償っていただきたいと思います」などとコメントしました。