医療従事者の報酬はボランティア

診療所とは言っても、町の病院のような治療と投薬ができるわけではない。医療資材は限られている。あくまでも下山できるようにするためのサポート、そして町の医療に繋げることが目的だ。本当に厳しい状況となれば、救助要請をして、警察と山岳遭難防止対策協議会(遭対協)が出動して、その登山客を下すことになる。

高山病や転倒などによる怪我や靴擦れまで、いろんな人が訪れる。年間の利用者は98人に及ぶ。診療費は無料である。

診療する国際山岳医・市川智英医師と凍傷治療のスペシャリスト・光楽文生医師 

副委員長を務める国際山岳医の市川智英医師は「山では検査機器なども無いので、自分の診察を武器にしなければならないのが麓の病院とはかなり異なる」と言う。
しかし、山岳医、山岳看護師の地位は低く、医師たちの活動はボランティアが現実である。

国際山岳医・市川智英医師と栁澤太貴さん

市川医師は「山岳医療の地位を高くしたい」。栁澤さんは「長く続けるために、質を高めるためにも将来的はボランティア活動でなくしたい。医療従事者の皆さまに報酬を払えるようにしていきたい」と話す。

二人の熱い夢だ。

赤岳鉱泉では夕食後、安全登山に少しでも貢献したいと、「山の医療相談室」を随時開いている。登山客も多く参加して、熱心に耳を傾ける。

「赤岳鉱泉医療所」は24年に法人化、賛助会員も増えてきて、着実にその夢に向かって走っている。

山の医療相談室

シリーズ「小屋番 八ヶ岳に生きる」
【第1話】「このままでは自分が壊れる」23歳で都会を逃れた青年は、なぜ氷点下20度の八ヶ岳に向かったのか…『自分をリセット』八ヶ岳の山小屋に生きる小屋番たちの思い
【第2話】「飢えた鹿はトリカブトも食べる」”鹿に食いつくされる八ヶ岳の森” 山小屋で働く小屋番が抱く危機感「このままでは八ヶ岳の森が消えてしまう」
【第3話】遭難者の1割が死亡か行方不明「スマホばかり見て自分の実力を知らない」八ヶ岳の山小屋を守る小屋番の痛切な警告

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<プロフィール>
執筆者:永山由紀子
1989年東京放送(現TBSテレビ)入社。情報番組やドラマのディレクター・プロデューサーに従事。企画・プロデュースしたドキュメンタリー映画『小屋番 ~八ヶ岳に生きる ~劇場版』は1月9日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか~全国で順次公開、上映中