女性「絶望して事件を起こしてしまったのは、彼1人の問題ではない」
事件から1年を前に、現場を初めて訪れた女性はビルをじっと見上げ、少し間をおいて、こう話した。「約4年前に会った時は、前を向いて立ち直ろうとしていたのに、彼はなぜ人を恨んで巻き添えにしようと思ってしまったのでしょうか」「SOSを求めていた人が絶望して事件を起こしてしまったというのは、彼1人の問題ではない」
女性は、「過ちを犯した人を受け入れられる社会であれば、事件は起きなかったのではないか」、と感じていた。
1年間この事件を取材する中で、発達障害で孤立していた女性は「苦しいことがたくさん重なると心は簡単にペチャンコになってしまう。人を恨むことで自分を保っていた。もしかしたら事件の犯人は私だったかもしれない」と取材に答えていた。元受刑者の男性は「服役中は自暴自棄になっていた。事件はありえないことだが、容疑者の気持ちがわかってしまうこともある」と話した。
聖マリアンナ医科大学の安藤久美子准教授(犯罪心理学)は「自分の境遇自体に不満があり、その中で他責的になって誰かを巻き込んで殺したいという、そういった心性が考えられる。今回の事件の予備軍となる人は一定数いると考えられる」と指摘している。
こうした境遇にいる人たちへの対応は非常に困難が伴う。ただ地道だが、そこに目を向ける企業や取り組む団体が少しずつ増えているというデータもある。孤独で苦しんでいる人を取り残さない社会を目指すことも、この事件の教訓ではないかと思う。
MBS報道情報局
法花直毅