パン、パン、パン! 師走の道場に響く「音」と「熱気」

住宅街の一角にあるそば道場

2025年の年の瀬。沖縄県名護市にある建物からは、パン、パン、とリズミカルに台を叩く音と、張り詰めた熱気が漏れ出していた。

「1、2、3、4、5! 頭の中で数えて。リズムが大事、正確にだよ、正確に!」

粉の舞う道場で、小柄ながら鋭い眼光を飛ばす女性がいる。この道場の主、宮城久美子さん(71) 。 沖縄で「ミヤギさん」が弟子に道を説く―。まるで1980年代の名作映画『ベスト・キッド』のワンシーンのようだ、と言うと少し大げさだろうか。

しかし、ここはカルチャースクールではない。師匠と弟子たちが粉と水、そして己の心とぶつかり合う、真剣勝負の「道場」そのものだ。

沖縄そばの激戦区・名護にあって、あえて「日本そば」の道を究めようとする人々が集う場所 。なぜ彼らは、宮城さんのもとで粉まみれになっているのか。そこには、一杯の蕎麦に込められたそれぞれのドラマがあった。