「いつか輪島に戻る」妻と交わした約束

楠さんには妻・由香利さんと交わした約束がある。

「輪島で最期を迎えよう」。

静岡県出身の楠さん。20歳の頃に川崎市に移り、後に妻となる由香利さんに出会った。飲食店の店長として料理の腕を磨き、2018年に由香利さんが生まれ育った能登に移り住んだ。

開業前、輪島市のホテル「こうしゅうえん」に泊まり2人で店の構想を練った。こんなことをしたい、こういう場所にしたいと夢が広がっていった。その時、楠さんの目についた輪島市のパンフレット。まちのおすすめスポットや水揚げされる海産物が紹介されていた。何気なく、冊子に載っていた魚の絵を描いた。気に入った由香利さんの発案で、絵をスキャンしのれんとして輪島の店に掲げた。

地震後、押しつぶされた家からのれんを見つけ出した。汚れて破けていたが丁寧に洗い、川崎の店に飾ることを決めた。

輪島の店にあったのれん 今も川崎の店に飾る=2025年12月

「いずれやっぱり戻らなきゃいけないなって思っていますよ」

いつかまた輪島に戻ることを誓い、楠さんは川崎で店に立ち続ける。