深刻化する「黒字廃業」と2025年問題

野村:坂口さんは本業のコンサルティングの現場でも、こうした変化を感じることはありますか。

坂口:相談が非常に増えています。例えば、ある大企業の取引先である中小企業の社長が突然訪ねてきて、「心が折れてしまったので、今年か来年で事業を辞めさせてほしい」と切り出されるケースが頻発しています。

いわゆる「企業の終活」として、今後のスケジュールが書かれた「企業のエンディングノート」を提示されることもあるそうです。さらに衝撃的なのは、廃業する企業の約半数が「黒字」のまま幕を閉じているという事実です。

野村:黒字なのに、なぜ辞めてしまうのでしょうか。

坂口:経営者の年齢が75歳から85歳くらいになると、たとえビジネスが順調でも、将来の事業拡大に向けた気力が続かなくなってしまうという側面があるのかもしれません。

野村:やはり「後継者不足」という問題が大きく関わっているのですね。

坂口:その通りです。サプライチェーンの世界では「2025年問題」と呼ばれており、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるタイミングが大きな節目となっています。

また、事業承継を難しくしている「お金」の問題もあります。例えば、長年社長を支えてきた「右腕」のような人物に会社を譲ろうとしても、会社が成長しすぎて企業価値が10億円にまで跳ね上がっていた、というケースがあります。引き継ぐ側がその株を買い取る資金がなく、さらに配偶者から「多額の個人保証を背負うのはやめてほしい」と反対され、断念してしまうのです。

野村:企業価値が高すぎることが、逆に仇となってしまうのですね。

坂口:そのため、名刺には「社長」と書いてあっても、実際には株を持たず代表権もない「雇われ社長」という形が増えています。抜本的な承継が進まないまま、創業者が代表権を持ち続けているのが現状です。

倒産の背景にあるコロナ禍の「ゼロゼロ融資」

野村:一方で、倒産に関してはいかがでしょう?

坂口:コロナ禍で行われた「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」の元本返済が始まったことで、「ゼロゼロ融資後倒産」が急増しています。かつては民事再生などで再建を目指す道もありましたが、現在の倒産の96~97%は「破産処理」、つまり再建を選んでいません。

野村:再建を目指す体力が、企業側にも残っていないということでしょうか。

坂口:そうですね。日本経済の高齢化を象徴しているようで、非常に危ういと感じます。資産がプラスの状態で辞める「廃業」と、再建を諦めて消滅する「破産」。この2つのルートで、日本の貴重な技術やリソースが失われようとしています。