ベテラン大六野がスピードを維持できている理由は?
入社3年目トリオがチームを牽引する存在だが、それ以外のメンバーも強い思いを持って駅伝に臨む。入社1年目に10000m日本記録を更新し、21年東京五輪代表となった相澤は、今年9月に初マラソンに挑戦した。結果は良くなかったが、「ニューイヤー駅伝と今後のマラソンに向けて、新たな自分になるために練習を大きく変えました」と、失敗を糧とした。
旭化成はトラックのエースは3区を任される傾向があり、相澤も22年は区間賞、24年は区間3位と3区で好走してきた。「今の旭化成は3区を走れそうな選手が多いので、自分は2区を考えています。上りも得意なので5区でも大丈夫です」。
6区を2年連続で走っている齋藤椋(27)は、高校を卒業して入社8年目に初めてニューイヤー駅伝を走った苦労人的な選手。区間順位は7位と4位。優勝を狙うチームの6区としては、もう少し上の区間順位が欲しい。「今回は6区でも他の区間でも、言われた区間で区間賞争いをしたい」。
2年目の亀田は関西大学出身。3年時の日本インカレ10000mで日本人1位になり、トラックの実績では関東の大学出身選手に引けを取らない。25年はスタミナ面もアップし、11月の八王子ロングディスタンスでは組1位、12月の甲佐10マイルではチーム内トップの9位を取るなど戦績が安定した。「距離への不安も甲佐で払拭できました。風や坂、距離に関係なくどの区間でも行けます。走るからにはどの区間でも区間賞を取りたい」。
新人の山本は24年の全日本大学駅伝6区(12.8km)で、区間記録を14秒更新して区間賞を獲得した選手。入社後しばらくは力を発揮できなかったが、11月29日のNITTAIDAI Challenge Games10000mでは27分51秒44の自己新をマーク。三木弘監督は「練習を見ていると、前半速く入っても後半にもうひと伸びする。伸びやかな走りをする選手です。追い風の区間ならヨットのように帆にしっかり風を受けて、グイグイ進んでいくイメージがあります。前半で使いたい選手」と高く評価している。
そしてベテランの大六野の存在が頼もしい。過去9回ニューイヤー駅伝に出場し、4回の優勝に貢献してきた。スピード区間の3区を4回、最長区間を2回、アンカーの7区を2回走り、前回は初めて5区を任された。20年以降はマラソンが中心になっているが、それでも3区や最長区間など、高いスピードが必要な区間を任されている。「スピードは練習をすれば普通に出ます」と事もなげに言う。
それを可能にしているのは、大六野が「動きの再現性」を重視し、フォームの精度を追求しているからだ。「走ることは“技術”と思っています。体重の乗せ方がどうかなど、技術を理解して走れば、どの大会でもパフォーマンスを発揮できます。日頃のジョグも含めて、練習を積み重ねれば動きの再現性が上がります」。
12月に入ってインフルエンザにかかり少し練習が中断したが、大六野の走りが崩れることは考えにくい。旭化成の初優勝は1964年の第9回大会で、60年代、70年代、80年代と4回ずつ優勝し、90年代は9回優勝と黄金期を築いた。00年代は優勝できなかったが、17年から4連勝し、前回の優勝を加え至近10大会で5回の栄冠を手にしている。エースだけでなく、チームの全選手が強い思いを持って走ってきた結果が、26回の最多優勝という形になっている。選手層の厚さと気持ちの強さが発揮されれば、旭化成はオール日本人選手でも2連覇の力がある。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















