電通の社員だった高橋まつりさんが長時間労働のすえ自ら命を絶ってから、あすで10年になります。労働時間をめぐる規制の緩和が検討されるなか、まつりさんの母親が今の思いを打ち明けました。

過労自殺した高橋まつりさんの母親・幸美さん。きょう、会見を行いました。

まつりさんの母 高橋幸美さん
「10年という長い年月、何度季節がめぐっても、私の時間はあの日のまま止まっています。どんなに時が過ぎても、まつりは大切な愛おしい娘です。『働くことが人の命を奪ってはならない』、まつりの死を通して気づいたはずです。これ以上、まつりのような過労死の犠牲者を増やさないでください」

2015年のクリスマス、自ら命を絶ったまつりさん。入社1年目でしたが、亡くなる前の残業時間は月およそ105時間にのぼり、労災と認定されました。

幸美さんの部屋には今も思い出の品が…。何度も旅行するほど仲が良かった母と娘。その母親に、まつりさんは亡くなる当日、メッセージを送っていました。

「大好きで大切なお母さん、さようなら。ありがとうね。仕事も人生も全てがつらいです。お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだから」

まつりさんの母 高橋幸美さん
「メッセージをみてすぐ電話したら、まつりが出たんです。会社なんか辞めてもいいんだから死んじゃだめだよって言ったら、『うんうん』と言ってて」

その後、幸美さんの職場に警察から電話があったといいます。

まつりさんの母 高橋幸美さん
「『娘さん、電通にお勤めですか』と言われて、『けさ亡くなりました』と。あの時、電話の後にすぐに行けば、助けられたかもしれないのに。『お母さん、自分を責めないでね』って書いてあったけど、私のせいだと思って」

それから10年間、幸美さんは過労死をなくそうと、自らの体験を語っています。

事件を機に青天井だった残業は法律で規制されました。しかし…。

まつりさんの母 高橋幸美さん
「いま対策を進めているにもかかわらず、過労死がなくなっていない。『お母さん頑張ったよ』『まつりちゃんのような人がいなくなったよ』と、10年だけど良い報告ができない」

高市総理は今年10月、心身の健康維持と従業者の選択を前提とした「労働時間規制の緩和の検討」を指示しました。

残業時間の上限は、月45時間、年間360時間。繁忙期などであれば、月100時間未満、年720時間以内です。

厚労省は現在、労働時間規制を中心に調査を行っていて、その結果などを踏まえ、議論を進める方針です。

幸美さんは…。

まつりさんの母 高橋幸美さん
「自分が知らないうちに病気になったり、死に至ってしまう。それが過労死の恐ろしいところ。労働時間規制の緩和は絶対しないでほしいなって。娘や私と同じような思いをもう誰にもしてほしくないです」