戦後は活況も、衰退続く駅前通り

玖珂駅前は戦後、復興とともに人や物の往来が盛んになり、昭和30年ごろには通勤ラッシュで人や自転車がひしめいていました。当時の写真からは活気あふれる様子がうかがえます。

しかし、車社会の到来とともに衰退が進みました。人通りも減り、毎年行われていた地元の祭りもここ3年は新型コロナの影響で開催できませんでした。

高齢化、空き店舗増…シェアキッチンに地域も期待

駅通りで衣料品店を営む西森重子さん(78)と夫の敏博さん(73)は、まちの変遷を見続けてきました。

西森敏博さん
「ここはおもちゃ屋さんがあってここは自転車屋さんその向こうが履き物屋さん」

かつては映画館やスーパーもあったと話します。

敏博さんは、商工会で駅周辺の活性化に取り組んできましたが、それが追いつかないほど空き店舗は加速度的に増えていきました。

西森敏博さん
「こっちから7軒ぐらい閉まってる」
西森重子さん
「電気屋さんも閉まったし」
敏博さん
「さみしいね、さみしいね」
重子さん
「建ち変わるいうたら、普通の住み家が建つんですいね」

高齢化、売り上げ減少、跡継ぎがいないという流れの中で廃業せざるを得なくなるのが現状です。そんな中で始まった前田さんたちの取り組みが起爆剤になればと期待を寄せます。

敏博さん
「すばらしいことだと思ってます。この地域を活性化してもらいたいです」 

駅通りマルシェでにぎわいを

各地で徐々に祭りやイベントが復活し始める中、今年は玖珂駅前でも、12月10日にマルシェを開催することになりました。

商店街の一員として、初めてイベントに参加する前田さん。外から来た自分をやさしく受け入れてくれた人たちのためにもイベントを盛り上げたいと考えています。

前田さん
「外から小さいまちに入るとやりにくいっていうイメージがすごくあったんですね。でもそんなことはなくて。私もできることをして、恩返しがしたいです」

新しい店は「笑顔が宝物」

11月23日、西村さんが店をオープンしました。父親が作った新米で炊いたおにぎりと、手作りの焼き菓子、コーヒーなどを提供します。いずれは、ふるさと玖珂で自分の店を持ちたいという西村さん。店の名前は「スマイル・トレゾール」。「笑顔が宝物」と名付けました。

西村さん
「地元である玖珂をもっといろんな方に利用してもらって、活気が出るのが1番だなと思うのと、人が集まる、笑顔があるっていうのが理想だと思ってます」

人と人、人と地域をつないで「まちを楽しく」

前田さんは、シェアキッチンに応募してくる人たちが、「飲食店をやりたい」というだけでなく「まちを楽しくしたい」と考えていることに希望を感じています。

前田さん
「もっとここの通りがお店いっぱいできたらいいのにねとか、そういう話ができるので楽しいですよね。夢を一緒に話せるっていうのはすごく思いますね。1人だけじゃないんだなって」

人と人、人と地域をつないでまちをにぎやかにしたいという前田さん。シェアキッチンで経験を積んだ人たちが独立して空き店舗で開業し、人が集う場所が増えていく。そんな未来を思い描いています。