「彼女は帰した」工作員の嘘で引き裂かれた二人

続けて、地村さんは拉致された夜の記憶を語った。

地村保志さん「私達は小浜公園で拉致されて、別々の袋に入れられて、同じ船に乗せられて北朝鮮まで行くんですけれども、話もできない、目も隠されているから、分からないんですよ。自分1人だと思うんですね」

船の中で工作員に「彼女はどうしたんですか」と尋ねると、「彼女は用はないから帰した」と告げられ、地村さんは富貴惠さんが同じ船に乗っていることを知らなかった。

北朝鮮 電力不足で薄暗い夜の平壌市内(1997年撮影)

北朝鮮に到着した際も、二人は別々に降ろされた。地村さんは富貴惠さんが同じ国にいることすら知らぬまま、「招待所」へと送られた。二人が再会するのは、1年4か月後のことだった。