マリウポリで化学兵器は使われたのか…また次々と明らかになる住民の大量虐殺。真偽が問われる中、ロシア軍に新しい総司令官が誕生した。今なぜ新総司令官の就任なのか?泥沼化するウクライナ戦争で少しずつ見え始めたロシアの戦いの実態を読み解いた。

■「プーチンのイメージでは“ウクライナは外国じゃない“」


キーウ周辺から撤退し、東部南部に戦力を集中させるという、いわば“第2ステージ”に入ったロシア軍のウクライナ侵攻。そこに総司令官として登場したドボルニコフ氏とは果たしていかなる人物か…?2015年からのシリア内戦でアサド政権を支えたロシア。その際のロシア軍を指揮したのがドボルニコフ氏だ。彼の指揮によって大規模空爆が展開され、多数の市民が犠牲になった。そこでは化学兵器の使用もあったという。さらにチェチェンでの戦いでも指揮を執り、ロシア軍の残虐性の象徴のように思われている。今後の戦い方に変化はあるのだろうか。

防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長:
これからドボルニコフ氏が担当していた東と南が重点地域になるので、これまでの作戦指揮の評価に加え、今までウクライナの中での戦闘に統一感がなかったので、より効率的、効果的な総指揮をこの人に託したということ…(中略)ただ、これでロシア軍の動きがロシア側にとって有利な方にガラッと変わるかというと私はそうは見ていない。現場の兵士の疲弊感。長期戦でかなり消耗している。

兵頭氏は、ドボルニコフ氏が就任する前からブチャのような惨状があったことからすると、彼が総司令官になって劇的に残忍性が高まることはないと話す。ただ今後それ以上に危険性が増すことがあるという。

兵頭慎治 政策研究部長:
大量破壊兵器の使用などについてはシリアでの経験をお持ちなので、危険性は高まると思います。

一方、前総合幕僚長の河野克俊氏は、これまで総司令官がいなかったことが通常の軍事作戦の常識から逸脱していると話す。

河野克俊 前総合幕僚長:
本来なら統合的に指揮を執るウクライナ派遣軍司令官というのがはじめから任命されてしかるべきだった。それが今まで、いなかった。だからバラバラに作戦を遂行しているという印象だった。

ーーなぜそんなことが起きたのか?

河野克俊 前総合幕僚長:
今回のウクライナ侵攻は、プーチン大統領の世界観で始められている。プーチンは去年、論文を出しているように、ロシアとウクライナは一体だと…。ということはプーチンのイメージでは、ウクライナは外国じゃない。外国と戦うなら軍隊が出る。だが、国内のこととなると治安部隊が主体になる。そうなるとKGBの後継であるFSBが主体となってやっていたのでこんなバラバラな行動だった。だがここへきて、いろいろうまくいかない、軍内部の不満もたまってきた、ということで総司令官を置いたってことじゃないですか。

総司令官を得たロシア軍。今後統率がとれた戦いに移るのかというと、なかなかそうはいかないようだ。