事件から4年。1人の遺族が受刑者に寄り添う活動を始めました。

 12月14日、大阪市北区で行われたのは、2021年に大阪・北新地のクリニックで起きた放火殺人事件の追悼コンサートです。被害者の遺族やクリニックに通院していた元患者らが集まり、いまは亡き院長らを悼みました。

 4年前の12月17日、北新地のビルに入るクリニックが放火され、院長の西澤弘太郎さん(当時49)と患者やスタッフ計26人が犠牲に。放火した元患者の谷本盛雄容疑者(当時61)も死亡しました。

 今回の追悼コンサートを主催していたのが、亡くなった院長の妹・伸子さんでした。遺族の立場でありながら、過去に罪を犯した人たちに寄り添い、再犯を防ぐための支援活動を行っています。

 今年3月、伸子さんは受刑者を収容する施設を訪れました。兄を失った妹として自ら講演をしたいと申し出たのです。受刑者とははじめての対面です。

 (伸子さん)「私は加害者も被害者も減らすように活動していきます。特に再犯を防ぐためにできること、犯罪に至った原因を見つけることが重要じゃないかと考えています」

 伸子さんが最も強調したことは今後の人生を悲観しないでほしい、ということでした。

 (伸子さん)「不幸な人生しかない。そんな事はないんです。ご自身が変えていけば、ほかの道も必ずあります。一緒に進んで行きたいなと思っています」

 7か月後、施設には再び伸子さんの姿がありました。受刑者9人から個別に面談をしたいと申し出があったのです。

 (受刑者)「執行期間中にもう1回、覚せい剤を使用してしまって」

 面談を申し込んだ40代の受刑者の男。薬物に依存していたといいます。

 (伸子さん)「これから(ここを)出て、(覚せい剤を)やらない自信とやってしまうかもというのはどっちが可能性高いですか」
 (受刑者)「50%くらいですかね」

 伸子さんは自分自身を見つめ直し、薬物に逃げない道を見つけてほしいと伝えました。

 (伸子さん)「そこ(薬物に)に行かないための幸せであったり楽しみを作る。それが1番だと思います」
 (受刑者)「自分で思い返しても薬物をしなかった時期のほうが、幸せだったなというのは結構思いますね」

 伸子さんはこれからも受刑者らとやりとりを重ね、人生をやり直すための前向きなメッセージを伝えていきたいとしています。

 (伸子さん)「今まで歩んできた人生の中で何があったのか、それは誰もわからない。でも絶対その中に今につながる何かがあったはずなんですよね。そこを見つめ直す、自分が生き直していくためにはポイントじゃないかなと考えています」