日本とドイツを比較する王毅外相

日本国内で今年3月、長崎原爆資料館にある南京事件も含めた旧日本軍の侵略や加害行為の展示をめぐって、資料館の運営委員の一人が「南京事件は中国によるでっち上げだ」と発言しました。

中国は、この発言などもウオッチしており、日本政府だけでなく、日本人が過去をどう捉えているかに関心を寄せています。

日中間の歴史問題に関連して先週、中国の王毅外相が訪中したドイツのワーデフール外相と会談した際にも、日本への批判が展開されました。王毅外相は、

「ドイツと異なり、日本は戦後80年が過ぎても、侵略の歴史の反省が徹底されていない」

と発言し、さらに「日本の現職の指導者による台湾を巡る誤った発言が重大な危害をもたらしている」と付け加えました。

これは、先の対戦で同盟を結び、他国を侵略した「日本とドイツ」を並べ、「片や歴史上の過ちを大いに反省している(=ドイツ)」「片や植民地支配した台湾に対する認識を含め、まったく反省していない(=日本)」という対比を強調する手法です。

つまり、あえてその場にいない日本を批判し、目の前にいるドイツ外相を持ち上げ、賞賛することで、ドイツとの関係も大切にしながら、日本を意識することに重点を置いたと言えるでしょう。

重苦しい空気に覆われたまま、日本と中国の関係は年を越しそうです。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。