メディアと市民が持つべき冷静な視点
80数年前と違うのは、今日の中国は列強に蹂躙されていた「弱い中国」ではないこと、そして、情報伝達手段が数限りなくあることです。メディアまでが極端に走り、「売れるから」「ページビューを稼げるから」という理由で極端な方向に走れば、危険な方向が見えてきます。
「竹槍事件」の教訓が示すように、事実を知っていても報道できずにいたという反省から生まれた記事も、時すでに遅く、その1年半後の敗戦に至る流れを止めることはできませんでした。
トップに立つ人や影響力のある媒体が世論に迎合したり、世論を煽ったりすればどうなるか。過去の教訓は明確に語っています。今、外国人に対する排他的な風潮や他国への蔑視といった声が一部にありますが、過去の戦争前夜も、同じ風景がありました。
インターネットを通じて誰もが意見を発信できる時代だからこそ、私たち一人ひとりが、極端な言動に流されず、冷静になる必要があります。84年前の今日、太平洋戦争が開戦しました。この日が二度と来ないように、過去の教訓を改めて心に刻みたいと思います。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。














