「圧倒的に努力不足だった」元信者の弁護士が語る宗教2世の救済への思い
裁判では、山上被告が兄と妹に保険金を残すため、自殺を図っていたことも明らかになった。しかし、母親の信仰は変わらず2015年、兄が自殺。そのときの様子を妹はよく覚えていた。

山上被告の妹(40代)
「警察署で兄の遺品を渡されたとき、徹也は声を上げて泣いていました。兄の遺体から一晩中離れず、『俺のせい』と辛そうでした」
山上被告は、兄の自殺をきっかけに教団への復讐を決意したという。
被害者救済に取り組み、裁判でも弁護側の証人として出廷した神谷慎一弁護士。事件後、山上被告の妹から相談を受けたという。

神谷慎一 弁護士
「継続的にお母さんとの関係について、法的にこういう問題があるとか、こういう点があるというようなことを含めたアドバイスをした。関係性を工夫していくというか、(妹は)お母さんに複雑な思いはあるが、やはりお母さんだし。この人も被害者なんだと」
事件を起こした山上被告について、妹は裁判でこう証言している。

山上被告の妹(40代)
「大好きなお兄ちゃんでした。担任の先生が徹也について『真面目で努力家』と褒めていて、自慢の兄だと思っていました。
10代後半の頃、私が家に帰りたくなくて帰らなかったら、一晩中捜してくれていた。私たちは、統一教会によって家庭が破綻した被害者でした。
相談する窓口も探しましたが、親が入信した子どもの相談窓口は見つけられなかった。徹也は絶望の果てに事件を起こしてしまったんです」
実は、神谷弁護士は大学時代、旧統一教会の信者だった。数か月で脱会しその後、弁護士に。今は宗教2世を救済する活動をしている。
裁判では、どうすれば事件を防げたか問われ、涙ながらにこう証言した。

神谷慎一弁護士(裁判での証言)
「自分が圧倒的に努力不足だったと思います。もっと早く相談窓口を作ることを、弁護士としてすべきだったと」
――どういう思いからおっしゃったのでしょうか?

神谷慎一弁護士
「被害が起きてから損害賠償請求するとか、そういうことに手一杯になっちゃって、もっと根本的なところに目を向けて努力することが本当に不足していた。それをちゃんとやっていれば、(事件は)防げたんじゃないか。すごく後悔があって」
――特に妹さんの証言は胸に迫るものがありましたね
神谷慎一弁護士
「赤裸々に最初から語っていたということは、もちろんない。(2世は)みんな傷を抱えて、話すことそのものに自分も傷つくし、もっと差別されるんじゃないか、ひどい目に遭うんじゃないか。あれは徹也さんのためだけに力を振り絞ったんだと思う」
妹の声を聞いた山上被告は…

山上被告
「家族間でトラブルが始まった頃、妹は小学生で、一番傷つけられていると思っていて、何か最低限してあげられることをしてあげるべきだと。自分も父のように、生命保険金を残して自殺すれば、役割を果たせばそれでいいと思いました」
弁護士
「妹が証人として出てきたことについては」
山上被告
「非常に辛い思いをさせたと思います」














