長崎大学は、食用や釣りの対象として人気の海水魚「メバル」のオスが繁殖期にメスに対して「尿」と「音」で求愛する行動を世界で初めて実証したと発表しました。

長崎大学によりますと、これまで淡水魚では複数の種でオスとメスが繁殖に向けた活動の一環で尿を介して性フェロモンを放出することが知られていましたが、海水魚では体内の浸透圧調節の仕組みから尿の生成量が少ないためフェロモン伝達の媒体として機能しないとされていました。

その上、海水中で尿を視認することが困難なこともあり研究が進んでいませんでしたが、長崎大学の研究グループでは、メバルの尿に色素を注入することで海水中でも視認可能な「求愛時の尿放出行動」を始めて捉えたということです。

合わせて水中音声の録音・解析を通じて、求愛行動に伴いオスがメスに接近する際に発する「鳴き声」の存在と特徴も明らかになりました。

この音声は求愛行動の初期のタイミングである「接近時」に多く発生していて、複数回の求愛行動の最後に必ず放尿が行われていたことから、貴重な尿を「無駄打ち」しないような戦略があると考えられています。

このほか、野生個体のサンプリングや飼育実験でオスの社会的地位が高い個体ではより精巣が発達し、膀胱の発達や尿の保持量の上昇が見られたことから、尿が単に生理状態を反映するだけでなくオス自身の社会定期地位を示すシグナルとしても働いている可能性が示されたということです。